ア行
アイテム
「個条・種目」などの意味で、ファッション用語として使う場合は特定の衣服の種類、またこれ以上細分化する必要のない最小品目について用いる。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p180)
アイテム発祥の秘密
ネクタイは、17世紀、クロアチアの軽騎兵のシルクの首巻にヒントを得たルイ14世が、自分の警護の兵士たちに身につけさせました。それを、パリの洒落者たちが愛好し、世界に広まったのです。
ベルトは、ズボンを支えるアイテムですが、同時に武器をぶら下げるアイテムとして重宝されてきました。19世紀後半の各地の戦争で、ベルトは軍服の必需品になります。肩を必要以上に強調するためには、ウェストをきつく締めなければならなかったからです。
スーツのラペル(襟)のフラワーホール(日本では、会社のバッジをつけていますね)は、軍服のいちばん上のボタンホールの名残です。
スーツの袖口のボタンは、ロシアに侵攻したフランス兵が、鼻水を軍服で拭うのをやめさせるために考案されました。
上衣のベントは、車がない時代、兵隊が馬に楽に乗れるよう、軍服の後ろに切れ込みを入れたものです。
ハンフリー・ボガードが「カサブランカ」の中で着用し、世界的に流行したトレンチ(trench/塹壕)コートは、19世紀の軍隊用コートで、第一次世界大戦でさらにモダンにデザインされました。
塹壕の中で敵を迎え撃つため、防寒防水、さらに手投げ弾やナイフなどが装備できるよう、エポレット(武器を挟む肩章)や、ヨーク(武器を指し込む太いウェストベルト)など、あちこちに工夫が凝らされています。
コートのラグラン袖は、1850年のクリミア戦争で、腕を失ったラグラン卿の名です。ゆるやかに羽織れるコートということで命名されたのです。
カーディガンも、同じクリミア戦争の軽騎団長、カーディガン7世に因んで名づけられ、後に軍人たちがくつろいだ時に、今でいうカジュアルウェアとして愛用されました。
すべてのTシャツは、もとを正せば軍服の下着です。
アイビースタイル
正確には、アイビー・リーグ・モデル。カレッジウェアの一つ。アメリカ東部8大学の学生達が流行させたスーツスタイル。肩幅が狭くずん胴。狭い襟が特徴。
アイビースーツ
アイビーリーグというのは、米国東部の8大大学が形成するリーグのこと。当時この大学に属する学生は、いわばエリートで一種のスノビズム(貴族嗜好)めいた伝統を誇っていた。こうした伝統を一部のお洒落な学生達が極端に推し進めて、学生街に近いボストンのテーラーなどと相談しながら誕生させたのが、アイビースーツ。
アイビーリーグモデル
1940年代後半から1960年代初めにかけて流行したアメリカの典型的なスーツスタイルのひとつ。ナチュラルショルダー、胴絞りのないボクシーシルエット、ノッチドラペル、センター・フックベントなどが特徴。シングル3ボタン上ふたつ掛け。わが国では60年代前後に大流行。
アイリッシュリネン
リネンの特産地であるアイルランドの名をつけて呼ぶ。すなわち本物のリネン。光沢がありしなやかで強度もシワもある。シワはリネンの友人である。
アイリッシュ・ツイード(Irish Tweed)
アイルランド産のツイードの総称。ドニゴール・ツイードなどがこの中に含まれる。
アイルランドスタイル
英国からの移民たちのスーツスタイル。肩線がシャープなことと、ウェストのきつい絞りが特徴。
アイレット
鳩目のこと。金具で縁を飾った靴紐を通す穴やベルト穴のこと。また、それに付ける輪状の金具のことも意味する。アイレットカラーはピンホールカラーの別名。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p180)
アイロンでシワがのびるのはなぜ?
シワは繊維の中の分子が洗濯や、汗などによって水分を含むとバラバラになり、いびつに結合してできたもの。ポイントは水分。繊維に水分を与えると、繊維を形作っている分子の結合が切れ、形が変わりやすくなるという性質がある。水分を含んだ洋服にアイロンをかけると、繊維の中の水分が蒸発し、シワになった繊維の分子が正しい位置で再結合するので、もとのキレイな状態に戻る。
アウトポケット
セット・イン・ポケットに対して、はりつけポケットのこと。パッチポケットともいう。またインナー・ポケットに対して、外側に付けられるポケットの総称として使われる。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p180) カジュアル感が強いジャケットによく用いられます。
アクァスキュータム
アクァスキュータムは、ラテン語のAQUA(水)とSCUTUM(盾)を組み合わせた造語で、水を盾で守ることから「防水」の意味を持つ。その名の通り防水性ウールのコートが発祥で、1853年最初の商品化が行われている。
イタリアのオーバーコートのほとんどが、(スーツの)テーラーから派生したことを考え合わせると、コートからスタートしたというのは希少である。英国の気候風土と密接な関係があるのだろう。
重量のあるカシミアをたっぷり使っているせいか、裾さばきも、時にはリズミカルにはいかず、100%の「エレガンテ」は決して持ち合わせてないのだが、チェスターフィールド独特のシルエットが際立って美しい。カシミアのダブルの前ボタンを外してしまうと、コートによってはプロポーションが撚れたりするのだが、アクァスキュータムに関しては、どんな場合でもプロポーションは不変である。加えて、手持ちのほかのオーバーコートに比べれば断然温かい。だからといって「実用」には位置付けられない、コートとしての完成度の高さが感じられる。英国産の独特の無骨さも多少持ち合わせているが、それはそれで味がある。
アクションプリーツ
ハンティングジャケットなど動きやすさを重視した本格的なスポーツジャケットでよく見られる背部両脇に施された深いプリーツ。別名ガシットバックともいう。ノーフォーク・ジャケット型のジャケットやジャンパー、ユニフォームのジャケットによく見られる。動作を楽にするために、袖の後ろ部分や、背中中央にとられた機能的なプリーツ(ひだ)のこと。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
アクセサリー
背広を着るために必要な付属品の総称。帽子、マフラー、スカーフ、ネクタイ、ハンカチーフ、シャツ、ジュエリー、ベルト、靴下、靴などの他、メガネ、時計までも含めていう。この言葉は主にイギリスで使われ、アメリカでは「ファーニシング」という場合が多い。
(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
あごぐせ
ネックラインからバスト・ポイントに向けてダーツを縫って立体感を出すための方法。
胸筋が発達された人はあごぐせをとらないと、襟が浮き上がってしまいます。襟をめくればあごぐせがとってあるかが分かります。鎖骨辺りから斜めにダーツをとってあれば、それがあごぐせです。
アコーディオンポケット
アコーディオンの蛇腹のような畳みひだをつけたポケット。ベローズポケットと同義。
楽器のアコーディオンの胴に見られるような「たたみヒダ」をつけたポケットのこと。このヒダをアコーディオン・プリーツと呼ぶ。カーゴ・パンツなどのポケットに見られる大きくて機能的なものである。
(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
麻
麻
麻は植物繊維。「麻」と呼ばれる植物は存在せず、「リネン」や「ラミー」、「ジュード」などと呼ばれるような植物の総称。
麻の性質
麻の繊維は断面がドーナツ状になっています。ストローを例にとってみれば、ストローの折れた部分というのは白くなってしまい、元に戻そうとしても戻りません。それと同じように麻の繊維も一度生地折れしてしまうと水を十分に含ませて、プレスをしっかりかけてもなかなか元には戻りにくい性質をもっています。アイロンをあてた時はシワが伸びてシャキッとしていても、時間が経過し、空気中の湿気を吸うと戻りジワができてしまいます。
着るたびに、そのシワも自然なシワになり、麻のスーツ及びジャケットが味わい深いものになります。
アシメトリック
不均斉の、不釣合いのといった意味でファッション用語としては左右対称でないデザインに使う。ワン・サイド・オフ・バランスともいう。たとえばボタン開きの位置を脇にとったシャツなどに用いる。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
足元の美
ほぼ一世紀前、現代の靴下はその地位を靴に譲り、脇役に徹するようになった。にもかかわらず、靴下はくるぶしにロゴマークをべったり付けられ、靴とバランスのよい関係を保てなくなってしまった。不必要で大きすぎるマークのために、飾り穴やステッチに囲まれた靴の装飾美と競い合うようになった。
座したときの男の足元は、上品で控えめな装飾がほどこされたなめし皮(靴)から、無地でやや光沢のある上質なホーズへなにげなく続き、ズボンへの橋渡しがなされなければならない。
それが足元の美で、無地のホーズが上質の靴をさらに上質に見せるのだ。
アジャストタブ
調節用の持ち出し。ベルトレススラックスやジャンバー、ブルゾンの裾などによくつけられ、サイズの調節と装飾をかねたものが多い。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
アスコットタイ(Ascot tie)
まだ一度もアスコットタイを結んだことのない人でも、アスコットスカーフならよくご存知のはず。アスコットスカーフは別名:スポーツアスコットなどとも呼ばれるように、アスコットタイのカジュアル版なんです。
アスコットタイの流行は1870年代のこと。それ以前のネックウェアは一般に「クラヴァット」といって、細長いスカーフ様であり、それぞれあしらい方に工夫が凝らされたです。かの洒落者ボオ・ブランメルでさえ、思い通りに結ぶのにいくつものクラヴァットを為損じたという話があります。そこで時代とともに、より結びやすい、ひとつのパターンを意図したネックウェアがあらわれるのです。そうした新型のクラヴァットのひとつとして、人気を集めたものに、アスコットタイがあったわけです。
アスコットタイの名はよく知られているように、英国の競馬場アスコットにちなんだものです。バークシャー州アスコットヒースの競馬場。1711年8月11日、アン王女の命によりはじまった格式と由緒を誇る競馬。当時ここに集うハイカラ紳士達が好んで、フロックコートの襟元に飾ったころから、その名称がはじまったのです。なお、アスコットでは伝統的にグレイのフロックコート(モーニングコート)とグレイトッパー(シルクハット型のグレイの帽子)とが着用されます。グレイのモーニングコートを特にアスコットモーニングと呼ぶほどです。
アスコットタイは必ずタイピンを必要とすることひとつとりあげても、蝶ネクタイより、華やかなものであり、大いに活用したいものです。ただし、原則として日中のアクセサリィなのですが。また、結び方で注意しなければならないことは、両端を重ね合わせる時、かならず、左前にすることです。上着の前開きがそうであるように。
アスコットカラー
アスコット風に結べるようになっているスカーフ襟のこと。スカーフネック、ストックカラーともいう。
アスコット・モーニング
特殊なものとしてアスコット・モーニングと呼ばれるグレーのモーニングコートがある。ロンドンの西約40キロ、ウィンザー城にほど近いアスコットの町で毎年6月に開催されるアスコット競馬(ロイヤル アスコット ミーティング)にちなんだ呼称。ロイヤルファミリーをはじめ多くの貴顕たちg見物に来る格式の高いレースである。著名な紳士淑女たちが着飾り、多頭立ての馬車などを仕立てて優雅にアスコットを目指すことから、ファッションイベントとしても大きな話題を提供し、一大社交場となる。
中明度の無彩色のウール素材を用い、コート、ベスト、トラウザーズとも共地使いの三つ揃えとする。ウィングカラーにアスコットタイ、グレーのシルクハットの組み合わせが伝統的なすたいるである。
なお、日本では婚礼衣装として花婿がよく似たものを着装することがある。しかし、アスコット・モーニングはあくまでも競馬を見に行くスタイルであり、本格的なモーニングコートに比べてカジュアルなものと理解しなければならない。婚礼の花婿の晴れ着にふさわしいものとは言い難いであろう。
アストラカン
巻毛状の毛玉を持った、厚手の織物またはニットのこと。もとはソ連のアストラカン地方で産出するひつの毛皮のことであった。現在ではこれに似たものを含めて総称している。主に防寒用コート地として使われる。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
アセテート
反合成繊維の一種。パルプを主原料としたもので美しく、しなやかなところから「美の繊維」とも呼ばれる。反合成繊維(再生繊維を薬品加工したもの)は、このほかにもトリアセテート、プロミックスがある。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
アーチドカラー
衿が比較的堅めに仕上げられ、その開きがアーチ型をしたシャツのカラー。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p181)
アットリーニ
伊・ナポリの高級既製服ブランド。縫製が丁寧なことと、南イタリア独特のスーツスタイルで知られる。
アトキンソンズ
本社は、アイルランド。創業は1820年と古い。ストライプ、ペイズリー柄に特徴がある。毎年のコレクションで、同じような色を用いても、どこか変化を加える。素材使いも繊細である。モガドル(縦糸がコットン。横糸がシルク)製法の代名詞的ブランド。
Agnona(アニオナ)
「ナトゥラーレ(獣毛繊維の持ち味をいかすこと)」というテーマを常に追求してきたアニオナ社は、1953年の創業以来高級プレタポルテ及びオートクチュールにおける「服地の女王」と呼ばれるにふさわしい最高の品質にこだわり続けてきた。特にカシミア、アルパカ、そしてビキューナなどの高級獣毛素材におけるアニオナの名はあまりにも有名である。シャネルのコレクションに服地が用いられているという事実がそのクォリティの高さを物語っている。
アパレル
衣服(ウェア))の古語、雅語。服装、装いを広く意味する言葉だが、近頃では、「服飾産業」の名前に代わって、「アパレル企業」というように使われることが多い。似たような言葉に「ガーメント」がある。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p182)
アフターシックス
午後6時以降に着る礼装の総称。タキシード、イブニングコートのほか、ドレッシーな服装全般を含めて呼ばれる。
アームサイ
袖付け、袖ぐり、袖穴の意味でアームホールの古い呼称である。「サイズ」=「草刈り鎌」に形が似ているところからこの名がある。高低によって、袖のフィット感が変化する大切な部分である。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p182)
アムンゼン
張りのある原料を使った梨地織のセルのこと。細かい凹凸のある表面感と、爽やかなハンドリングの合夏地。この織物が開発された時期に、アムンゼンが南極探検に成功したことからこの名がつけられたといわれている。
アメリカン・カジュアル(American Casual)
ヨーロピアンカジュアルと対比される言葉で、明るい色彩のスポーティーなファッション。
アメリカンコンチネンタル
1960年代に、アメリカのジャズマンたちが流行させたスーツスタイル。短い上衣の着丈と大胆なフロントカットが特徴。フィッシュマウス型ラペルで、ゴージラインのスタート地点は、首筋から7~8センチ(現代のクラシックなスーツでは9~9,5センチ)で、下襟の上辺が急角度で水平に外側に開いていく。ダブルステッドのノッチドラペルの角度まではいかないが、ゴージの流れがL型になる。
アメリカンスタイルのスーツ
楽に身につけられるよう、あちこちを締め付けず、自然のラインを重視したアメリカ生まれのスーツのこと。アイビースタイルのもとになった。ナチュラルショルダーの典型である。
綾織り~1~
タテ糸、ヨコ糸とも2本ずつの浮き沈みを、一本ずらして織られているのが綾織です。サージ、サキソニーなど最も多く使われている組織です。
綾織り~2~
生地の目が斜めになっている布の織り方の総称。表面が比較的平滑のソフトな風合いで肌触りがよく、サージやギャバジンが代表的である。英語ではツイルと呼び、中世の甲冑のすねあてからきている。
アルスターカラー
上襟、下襟ともに同じ幅をもち、縁に太いステッチを施した幅広襟の総称。ポロコートやガーズコートの襟がこれに当る。
アルスター・コート(Ulster coat)
両前ベルトつきのロング・オーバー。もともとアルスターとはイギリスのアイルランド北部の州名で、同地方で多く用いられた両前のロングコートにこの名称が使われた。
胸を両前とし、腰ベルトつき、あるいは背だけベルトつきとして防寒用に着用される。原型は肩に雲形の肩当てなどをつけ、前後の身ごろへ外箱襞などをとり、ベルトも前までつけ廻したが、いまではこれを省略して背縫いの肩下のあたりから内襞をとることが多い。
前面は打合いの深い両前とし、3釦ないし4釦につくり、襟は大きく返し上襟の幅も広くステンカラーに変わるように作られるものもある。前までベルトを廻す場合は、尾鍵あるいは釦でとめる。また時として襟を二重襟とすることもある。主として旅行用、防寒用として用いられる。
アルパカ(Alpaca)
アルパカは南米ペルーやボリビアの高原や海抜3000~5000メーターのアンデス山中に棲息するラクダ科の動物の一種で、光沢のある、手触りの滑らかな毛が採れる。縦糸に綿糸、横糸にアルパカを使った織物は、最高級の裏地として使われていた。生後2年のアルパカから採れるファイン・アルパカは、色が白く、絹のように繊細で、ウールと混織して夏服地としても着用される。
アルスターレット
アルスターまがいのコートの意味。アルスターコートをやや簡便にし、軽快感を強調したもの。前合せは深いダブル・ブレステッド、襟はアルスターカラーと同じだが、バックベルトが付くのと、丈が多少短いという違いがみられる。
アルパカ~2~
南米ペルー、ボリビア、アルゼンチン北部の高地に生息する羊駝の毛。毛足が長く、色はグレー、白、黒、茶などでアンゴラ山羊に似た光沢とソフトな風合いが特徴となっている。裏地としても用いられる。
アンカット・ヴェルヴェット
邦名を「輪奈ビロード」。表面の輪奈をカットせず、そのまま残したものをいう。組織を経毛織として、針金を使って輪奈を作る。染色は布染めで、一般にシワが寄りにくいのが特徴。
アングルド・ボトム
アングルは「角度をつける」ことl。スラックスの裾をアングルしてうしろへ斜め下げとしたもの。モーニングコートのズボン裾がこの形をしているところから、モーニング・カットの俗称がある。パンタロンなどエレガントなシルエットのスラックスに用いられる。(「ファッション薀蓄事典」アポロ出版株式会社 邑 遊作 著 p182)
アンゴラ(Angora)
アンゴラには山羊と兎の二種類がある。トルコのアンカラ(アンゴラ)地方に起源を持つアンゴラ山羊の毛がモヘア。現在はトルコよりも、アメリカのテキサスおよび南アフリカ産のモヘアが使われている。生後一年までの仔山羊をキッドといい、繊度が細くしなやかなので特に珍重される(キッズモヘア)。
アンゴラ兎の原産地はトルコだが、現在は中国が主産地でドイツ,フランスなどがこれに次ぐ。織物や編物に使うアンゴラ兎は、軽さは羊毛の三分の一,暖かさは羊毛の3倍。細くて長く、ソフトで美しい毛が採れるように特別に飼育されている。この毛には縮絨性がないので、織物や編物の表面に浮き出てきて抜けやすいという欠点がある。(「毛織物の基礎知識」 洋装社 堀 栄吉 著)
アンコンストラクテッド・ジャケット
無構造服と訳される。裏地、肩パッド、襟芯、袖裏など、構造面における付属物の一切を省いて仕立てた上衣を指す。シルエットは全般にゆったりとしたずん胴型が多く、シングル型もあればダブル型もある。一見普通の上衣と変わりなく見えるが、着てみるとシャツのように軽く、カーディガンのように着やすいというのが大きな特徴。
アンソニー・シンクレアー
俳優ショーンコネリーのハマリ役といえば、007のジェームズ・ボンドを推す声が多い。その強力なボンド像を作り上げて行く上で、重要な役割を担ったが、ロンドンのコンジット・ストリートに店を構えるテーラー、アンソニー・シンクレア-、その人である。初期のボンドの控えめで多少ミリタリーテイストのスタイルは、彼の最高傑作の誉れ高い。ジェームズボンドとスーツとの蜜月の関係は、今なおスクリーンに息づく。
イギリスの考える普遍的スーツ
上質素材に丁寧な縫製。縫製はすべて伝統的に踏襲されているハンド・フィニッシュ。ブリティッシュ・スタイルの正しいドレープ。適度なウェストのシェイプ。スポーツジャケットにはシングル、スーツにはサイドベンツ。加えて美しいアクセサリー類である。アクセサリーとは、いうまでもなく、ボタンとボタンホール、各種ステッチ類のディテールで、これらはいわばスーツのかくあるべき姿なのである。
イセ込み
平面の布を立体的に形作るための技法。いせる部分を細かく「ぐし縫い」をして糸を軽く締め、波打ったところを、アイロンでころして、形作る。袖山、後ろ肩線、ぬ寝の切り替え線などに用いられる。
イザイア
伊・ナポリのクラシックな、既製服ブランド。ジャケット作りが巧い。創業は1957年。
イージー・オーダー
和製語。パターンメイドよりスタイルやディテール、素材の選択項が増えたオーダー方式。別名パーソナルオーダー、ハーフメイドなど。クラシコイタリア系スーツのオーダーの一種「ス・ミズーラ」とほぼ同義。マシーンメイド(工場仕立て)である。
イタリア人気質
イタリアのスーツの特長は柔らかさにある。生地と芯地が英国や日本に比べずっと柔らかい。色出しも巧みである。「イタリア人は色のマジシャンだ」と、英国既製服業界のあるオーナーがいっていたがその通りなのだ。
もともと食べること同様、おしゃれをすることにかけては世界でも有数なお国柄である。テレビに政治家や役者が映し出されると、本人そっちのけで服装談義が始まる。身だしなみがいい男や女たちには、誰もが「エレガンツァ」(上品な、粋な)と褒め言葉を贈る。
男たちのお洒落は徹底している。知人の一人は、三日間同じネクタイをする。それが気に入っているからである。ただし、スーツ、シャツ、靴は三日間とも取り替える。一見同じように見えるのだが、シャツのチェックやストライプのピッチが微妙に違う。靴も毎日自分で磨く。プラム(スモモ)を靴墨に混ぜ艶をだす。新しい靴は一度水に浸け、乾燥させ磨き込む。
お洒落で有名だった元首相はダークスーツにブルーのシャツ、紺地に白い水玉のネクタイを好み、現地の聞きかじりにはすぎないが、メディアに登場するときは一度として同じものは身につけなかったという。
フィレンツェでは、男たちがショッピング街を行ったりきたりして、シャツ屋のショーウィンドウを穴のあきそうなほどじっと見つめている。靴屋の店先ではオーナーと客とのあいだで、テンポのいいイタリア語が飛び交い、靴談義をうんざりするほど繰り返している。
そんなイタリア人気質が、イタリアの服を世界一に押し上げたのである。
イージーオーダー = メジャーメード / メード トゥ メジャー
簡単な注文服ということで、自分のサイズに合った既製のパターン(型紙)と生地を選び、本格的なオーダーメード(注文服)に比べ、ずっと短期間に製品が入手できる服作りのシステムをいう。あらかじめ決められたデザインと生地のなかから選ぶのと、実物による仮縫いがないことから、完全なオーダーメードとはいえないが、実際に採寸は伴うので、メジャーメードとか、メードトゥメジャーと、正しくは呼ばれる。
イタリアの男達がお洒落上手な理由
イタリアの男達がとりわけお洒落上手な理由は、クラシックなスタイルをよく知っていて、その上にモダンを積み上げていく術をよく知っているためにほかならない。彼らは古いモノをこよなく愛し、大切にする。街のなかには、ローマ帝国時代の遺跡が至るところに残っている。彼らが古いものを残し、そのふるいモノに囲まれているという現実は、彼らのお洒落観や人生観と必ずしも無縁ではない。コンクリートに囲まれている私達とは、違う視線を持っている。
ベイシックなモノに対する確かな視線を持ち続けなければ、本当のモダンを見極めることはできない。
イタリアの毛織物
今でこそMADE IN ITALYの毛織物の評価が高くなり、我が国への輸入量も英国を抜いて断然トップになりましたが、つい最近までは英国製よりも一段下の商品とみられていたました。
しかし、イタリアの毛織物の歴史は意外に古いのです。フランドル地方(今のベルギー西部)で発達した毛織物の生産は、13世紀に入ると益々活気が加わり、毛織物の生産に出資した人達に巨額の富をもたらしました。中でもイタリアの商人たちは、長年にわたって資本を投下し続け、その富によって新興の富裕階級が生まれました。その代表的な存在がフィレンツェのメディチ家でした。毛織物がルネッサンスを生み出したと言ってもいいでしょう。
イタリアのボタンダウン・シャツ
イタリアのボタンダウン・シャツは、襟の開きの角度が120~130度あるものが多い。ナポリのスタイルである。数年前に、ルチアーノ・バルベラが、ボタンを外したままネクタイを締め、一つのボタンダウンのシャツの着方を提唱した。ナポリ・スタイルのシャツは、もともと隠しボタン的発想で、ジャケットを着てもボタンは見えない位置にくる。したがって、この装いはドレス・ダウンではなく、ひとつのお洒落になり得る。
イタリアン・コンチネンタル(Italian continental)
1950年代中期のローマに端を発した背広の流行方の一つ。細い衿、大きなカッタウェイ、幅広い四角い肩、浅いサイドベンツ、ファンシーポケット、それにカフス付きの袖などを特徴とする着丈の短いタイト・フィットの上衣に、裾に折り返しを付けない、先細り型のベルトレス・スラックスの組み合わせから成る背広服。型はボタン間隔の狭いシングル3つボタンを中心に2つボタンと1つボタンのものがある。
イタリアのモヘヤ
イタリアのモヘヤ・メーカーは、英国のように特にモヘヤであることを意識していません。
モヘヤ糸も、普通の毛糸と同じ「リング精紡」で糸にします。リング精紡は、その構造上100%モヘヤなど高率混のモヘヤ糸を紡ぐのは難しいとされてます。ですから、イタリアのモヘヤ服地には高率混のものが少なく、英国ほど「張り」や「光沢」にこだわっていません。むしろモヘヤでも、ソフトな着用感を重視するという考えが基本になっています。
イタリアの服のテイスト
イタリアにいくと、イギリスとは若干ニュアンスが変化してくる。理由はトレンドに左右され易いこと、ブランドによるテイストの違いがはっきり出ること、さらにファブリック(織物)の使い方に、イギリスとは違ったオリジナリティを持っているためである。
そこらあたりを、アクアスキュータムのジェームス・アンガス・パウ氏は「イギリスはトラディショナルリストで、イタリアの方はエクスプレッショニストである。」と形容する。前者は伝統的型、後者は伝統に対して非常に表現力があるとでも訳せようか。正統はルールにのっとった服がイギリスならば、イタリアの服は、それをさらに表現力豊かにしたものだということなのだろう。ときとしてオーバーになるきらいがあるが、その表現力こそがイタリアの服のテイストなのである。
イタリアンカラー
シャツの衿型の一種。衿腰がなく一枚裁ちの衿で、そのまま縫い目がなく前たてにつながっている。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
イタリアン・コンチネンタル
1950年代中期のローマに端を発した背広の流行型のひとつ。細い襟、大きなカッタウェイ、幅広い四角い型、浅いサイドベンツ、ファンシーポケット、それにカフス付きの袖などを特徴とする着丈の短いタイトフィットの上着に、裾に折り返しをつけない、先細り型のベルトレス・スラックスの組み合わせから成る背広服。型はボタン間隔の狭いシングル3つボタンを中止に2つボタンと1つボタンのものとがある。
イタロ・フェレッティ
ローマのネクタイブランド。クラシックなネクタイ作りで知られる。ヴォリューム感があり、織りとプリントの表現が巧い。工場はローマ郊外のシルビー・マリーナ。
イタリアンスタイル
イタリアからの移民たちのスーツスタイル。肩を誇張し、ウェストはあまり絞らない。イタリアのテーラー達の考案による。
糸の番手
羊毛センイは、一般的に細いほどよいとされ、高価です。その理由は、センイが細いほどクリンプ(波状の縮れ)が細くたくさんあって、しなやかで美しい光沢があること、そしてセンイが細かいほど細い糸が紡けるからです。
羊毛センイの太さは、その直径を「ミクロン」という単位で表示します。
羊毛センイのランクは「番手」で表示されますが、センイの太さと番手の関係は、番手の数字が大きいほど、羊毛センイは細く、品質もよいということになります。
スーツ地で、「スーパー100’S」とか「スーパー120’S」という表示を見かけますが、この数字は使用している原毛の番手を示したものです。使用している糸の番手ではありません。
糸の番手2
毛糸の番手は、1グラム当たりの糸のメーター数で表示します。
1グラムで1メーターの糸・・・・1番手
1グラムで10メーターの糸・・・10番手
1グラムで60メーターの糸・・・60番手
このように、番手の数値が大きいほど、糸の太さは細い、ということになります。
イブニングコート = 燕尾服
日本では古く明治時代から「燕尾服」と呼ばれて親しまれてきた夜間の紳士第一装だが、現在では一般社会人にとってほとんど着用の機会がなくなっている。しかし、たとえば天皇や国王などの主催による夜会など、最高の格式セレモニーに招かれた場合にはなくてはならない礼装である。
よく知られているイブニングコートの着装機会としては、わが国では叙勲に際し天皇陛下から親授を受ける場合、およその勲章を佩用するとき、あるいは国家元首を招いての天皇主催の晩餐会に陪席するときなどが挙げられる。世界的にも有名なのはスウェーデン国王によるノーベル賞の親授式で、受賞はもちろん出席者も例外なく着装を求められる。
紳士のイブニングコートに対応するレディーゥウェアは、ローブ・デコルテと呼ばれる本格的なイブニングドレス。デコルテとは襟無しで刳りを大きく刳り下げることをいう。胸を露わにし、袖なしで背中を大きく露出させる。
イブニングドレス(Evening dress)
夜間の礼服。燕尾服。夜間の正宴、観劇、舞踏会などに着用する服装で、地色は黒または濃紺。ラペルはへちま襟あるいは剣襟とし、縁まで拝絹地(フェイシング)をかぶせ、前は衣(ころも)で燕尾型に切り落とす。前のボタンはかけないもので、丈はそのときの流行によるがフロックとモーニングの中間くらいが適当である。
チョッキは白地に限られるけれど、わが国の正式としては、宮中の正装としてもちいる場合にかぎり共生地のチョッキ、すなわち上衣と三つ揃いとして昼間儀式に着用する。夜間正装として用いられる燕尾服の付属品は、チョッキは必ず白地のピケ、またはシルク地を使用し、ズボンは共地、その側章に絹縁をもって飾る
オーバーコートは黒、紺、無地、霜降地のドレス・チェスター、ドレス・スリッポン、フロック・オーバー、ドレス・ケープ、ドレス・インバネスなど。帽子はオペラハットもしくはシルク・ハット。シャツは一枚胸の硬いものか胸襞つきのもの。カラーは前折れ型か一般的に用いられる。ネクタイは白地絹、麻、ピケなどの蝶結びか蝶ネクタイ。手袋は白のキッドかトナカイ。靴は舞踏靴、またはエナメル製黒オックスフォード、宝石は真珠の胸、袖ボタンで、ステッキは棒のものを使用する。
イートンカラー(Eton collar)
深くたれたダブルカラー(襟)。イートン・ジャケットの襟に出ている白の大きな丸いカラーがこの語の起こりで、これに似たカラーをこう呼ぶようになった。
イートン・ジャケット
イギリスの有名な学校「イートン・カレッジ」の制服として用いられる丈の短いジャケットのこと。ごくオーソドックスなオッドジャケットのウェストから下を切り落とした感じである。また制帽として用いられたものはイートン・キャップと呼ばれる。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
イヤーラウンド
「一年中」の意味。つまり、シーズンを問わず年間通して着られることをいう。イヤーラウンドスーツ、イヤーラウンドジャケットという具合に使う。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
イラン産カシミヤ
イラン産のカシミヤは、繊度がやや太く(18~19,5ミクロン),黒毛の混入が多いのが難点ですが、光沢の点では中国産、モンゴル産より美しいと評価されています。従って濃色で光沢の美しい製品を作る時は、イラン産カシミヤが使われます。
イリデッセンス(Iridescence)
玉虫調のこと。ベネシャン、カルゼなどのヨコ糸にカラフルな色を使い、織物の向きによってその色が玉虫状に見えるようにしたもの。
イリデッセント
「玉虫調」の意味。光の具合によってギラッと輝くような効果を持った生地のこともさす。コンテンポラリー・モデルの背広によく使われる。「虹色」の意味もある。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
イレギュラーストライプ
ペンシルやピンといった伝統的な縞柄ではなく、柄幅を極端に変えた2色使いストライプや多色使いのストライプを指す。
インターカラー / 国際流行色委員会
一九六三年、パリに創設。フランス、イタリア、日本など十八カ国の専門の公益団体からなる流行色に関する国際機関。毎年二回夏と冬会議を開き、実シーズンよりも二年前に、春夏、秋冬の流行色を予測決定する。各国の公益団体より2名ずつ代表が参加。それぞれ提案する約500色の中から20~30色に絞りこむ。日本はJAFCA(日本流行色協会)から代表が送られている。
インディア・マドラス
インドのマドラス地方でできる平織りコットン地にみられる、多色使いの不規則な大型の格子柄。この柄を織りやプリントで出したコットン地をインディア・マドラスと呼ぶ。アイビー調ウェアに好んで使われる柄となっている。単に「マドラス・チェック」ともいう。
インバーテッド・ベンツ
切れ目を入れずに、たたみヒダにしたベントのこと。インバーテッド・プリーツともいう。「虹色」の意味もある。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
インバネス
「トンビ」「二重まし」と呼ばれる、二重になったケープのこと。内側は身頃だけで丈が長く、外側は全体をおおう形の、丈の短いもので構成されている。スコットランドのインパネス港に因んだ語源。日本では明治20年(1887年)前後、和服用の外套として考案された頃に流行し、その形状から「トンビ」の俗称が生まれた。「着物にインバネスってのは、ライスカレーと福神漬け、と同じように和洋折衷大成功の一例である」とは伊丹十三氏の言葉である。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P184)
インペリアル・サージ
経に細番手の梳毛糸、緯に細い梳毛単糸を使い、2.2の斜文織とした目のつんだ薄手のサージ。色は紺か黒の無地が中心で、一見シルクのような光沢を放つことから、「絹セル」とも呼ぶ。
ヴィキューナ
南アメリカのペルーやエクアドルに棲息する野生のラマ。ヴィキューナの毛を用いた衣類は、毛織物の中で最高級品とされる。
ウィップ・コード
畝変わりの綾織地をいう。畝幅はごく狭いものから3ミリ位までの種類がある。また、これを、コットン、シルク、合成繊維などと混紡したものは、カバートと呼ばれ、日本では俗にカルゼ kersey という。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P185)
ウィンザーノット
英国ファッションリーダーだったウィンザー公が考案したとされるネクタイの結び方。
ウィンドウペーン
「窓ガラス」というほどに、細い線で窓枠のように四角に作られた格子柄をいう。イギリスの家に見られる窓は細い枠が多く使ってあり、それに似ているところから命名された。
ウェイストコート
ベストが「ウェイストコート」となったのは18世紀のことである。男らしさを誇る風潮がおこり、ウェイストがのぞくほど丈が短くカットされるようになった。
ウェイストコートはいかなる場合も絶対に一番下のボタンを留めてはならない、という法則は依然として守られている。この法則の由来は二つある。かつてベストの丈が膝まであった時代、ボタンを全部留めていては歩きにくかったから、という説。そしてもう一説はエドワード七世が皇太子の頃、ついうっかり一番下のボタンを留め忘れていたのを見て、まわりの者が右へならえしたのがはじまりであるともいう。
ウィンドー・ペーン(windou pane)
ペーンとは枠のこと。従って窓枠のような単純な一本格子のことをいいます。この格子柄は英国古来の伝統柄で、19世紀、英国の皇太子この柄のニッカーボッカーを着用して以来、一層ポピュラーになりました。
ウィンザーノット裏話
1930年代に流行し、現代までにその名を残すウィンザーノット。驚くべきことにこの結び方はウィンザー公の発明ではない。むしろ公はウィンザーノットを結んでなかったという。ネクタイの大きな結び目とそれに似合うワイドカラーのシャツを好んだウィンザー公は、大きな結び目を作るにはと考えた挙げ句、暑い芯地のネクタイを特別に誂えたのである。よって、プレーンノットで十分嵩張った結び目が完成。このスタイルに大衆は追随したが、普通のネクタイでは結び目そのものを大きくしなくてはならず、自然発生したものといわれている。
ウエストバンド
腰帯。ズボンの腰部を切り替えてとりつけた帯のこと。つまりベルト通しを付ける部分の呼び名。日本では通称ウエスマンという。
ウエストシーム
上着などのウエスト部分に付けられた縫い目のこと。モーニングコートやイブニングコートに見ることができる。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P185)
ウェストバンドについて
ウェストバンドの形はベルトを使うのか、ブレイシーズ(サスペンダー)を使うのかによって違ってくる。簡単に言うと、ベルト通しがあるか無いかということである。このベルト通しが登場したのはそれほど昔のことではない。フォーマルウェアには必ずブレイシーズを使う。ただしカジュアルウェアはその限りではない。そこでオッドトラウザーズ(替えズボン)にはベルト通しが付くようになったのである。
ヴェストについて
ヴェストのことをイギリスではウェストコート(waistcoat)と呼んでいる。フランスではジレ(gilet)、アメリカではヴェスト(vest)、日本ではチョッキとか、アメリカ式にヴェストと呼んでいる。
ヴェストの原型は1640年代に着られていた袖付き胴着のプールポワンである。この時代の紳士たちはフロントに飾りボタンが十数個も並んだプールポワンを着て、外出する時にはその上にコートを羽織っていた。1730年代になるとプールポワンの袖なしウェストコートが着られるようになった。当時のウェストコートはロココ時代の華やかな風潮を映し出して、飾りボタンのたくさん並んだ上衣丈の長いものであった。
ウエリントンブーツ
膝上までの深さのあるやわらかなレザーブーツ。半分の深さのものはハーフ・ウェリントンと呼ばれる。ファッションに影響を与えたとして有名な、ウェリントン侯爵一世にちなんだもの。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P185)
ウェルト・ポケット(Welt pocket)
へり飾りの当て布をつけた、ふちが太くなっているポケットのこと。背広の胸ポケットがこれにあたる。ウェルトとは、ヘリ飾りのこと。箱ポケットともいう。
ウェルト・ポケット(2)
一般的にはカジュアルタイプの用いられる切りポケット。帯状の切りポケットでジャケットの胸ポケットに採用される場合が多い。
ヴェルヴェット(Velvet)
添毛織物(パイルファブリック)の一種で、表面を短い毳(むくげ)か輪奈でおおった、手触りの柔らかい絹織物をいう。日本での通称は「絹天」または、「ビロード」ちなみにビロードなる邦名は、ポルトガル語のヴェルード(velude)ないし、スペイン語のvelludoから来たものとされ、かつて日本では、漢字の「天鵞絨」(てんがじゅう)をこれに当てていた。
ヴェルヴェッティーン(Velveteen)
いわゆる綿ビロード、コットン・ベルベットのこと。他にも日本では「別珍」(べっちん)、「綿天」、「唐天」などt称される。経毛添毛織としたヴェルヴェット(絹ビロード)に対し、経に綿双糸、緯に綿単糸を使用して、緯毛添毛織にした綿織物を指す。地組織になる地緯(じよこ)、毳を立てる毛緯との緯二重織に製織し、そのあと表面に浮き織りにした毛緯糸を、ナイフで切り開いて毳を立てたもの。ヴェルヴェッティーンは1750年、絹天(ヴェルヴェット)の模造織物として、フランスのリヨンで製織されたものである。その後ドイツやイギリスでも織られだし、1880年代頃からファッション素材として一般化。日本ではこれよりやや遅れて明治の中期に生産されはじめ、大正年間に足袋の材料として一般化した。別珍なる邦名はその時の(足袋の)意匠登録から出たものとされている。
ウーステッド(Worsted)~1~
梳毛糸。綾ラシャ。撚糸ラシャ。縞綾。縞ラシャ。梳毛糸を使って、平織り,綾織まだは朱子織りなどにし、ときには紋織りなどに製織された毛織物の総称。その種類は非常に多いが、だいたい表面のけばを切り取って組織をはっきりと現した種類と、仕上げ工程で縮絨起毛をほどこし地肌をおおいかくした種類との二通りに分けられる。ただ単にウーステッドと言うが、その種類はおびただしい。用途も極めて広範囲である。
ウーステッドという名のおこりは、約600年前にヨーロッパ大陸からこの製織法がイギリスに伝えられ、ノーフォーク州のWorsteadという一都市で始めて作られたのによると言われている。
ウーステッドにはサージ、カバーツ、ウイプコード、ベニシャン、コークスクリュウ、バラシーア、ピンヘッド、ダイヤゴナル、カシミヤ、ギャバジン、トラウザリングなどの種類がある。
ウーステッド(Worsted)~2~
俗にいう「梳毛」(そもう)。梳毛とは細くて長い繊維のことをいい、これを用いて平織り、綾織りなどにした毛織物を指す。スーツに用いられる最もポピュラーな素材。サキソニー、バーズアイなどがその代表である。
ウーステッドサージ
日本で言う「サージ」の代表。ごく一般的なサージのことで、梳毛糸を用いて、2.2の斜文に組織した梳毛絨。酔うとは背広やズボンをはじめ様々である。
ウーステッド・フラノ
ウーステッドを原料に作られたフラノのこと。普通、フラノは紡毛から作られるので、特にこの名称で呼ばれる。「梳毛フラノ」ともともいう。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P186)
ウーステッド・ヤーン
梳毛糸(そもういと)。普通のスーツ地は、ほとんどこの「梳毛糸」で織られているといってよい。
スーツ地の糸を一本取り出してみてください。普通二本の糸が撚り合わさって一本の糸(双糸)になっているので、その撚りをほどいて一本の糸(単糸)にしてみて下さい。それにも撚りがかかっていますが、その撚りは自然にパラッとほどけるはずです。すると糸を構成している羊毛センイは、一本一本容易に抜くことができます。
ということは一本一本の羊毛センイは絡み合うことなく並行に並んだ状態になっていたということです。このように羊毛センイが、櫛で梳いたように並行に並んだ状態になっている糸を「梳毛糸」(そもういと)いいます。
うちぬきボタン
打ち抜きボタン。フライフロントに対して、ボタンを外側まで出す仕立ての方法。背広上着のボタンは、ほとんどがこの方法になっている。(「ファッション薀蓄事典 アポロ出版 P186)
ウーベルト
伊・ミラノの、ネクタイブランド。モダンなタイ作りで知られる。プリントも多い。イタリア的というより、インターナショナルな市場を意識した、シニア向けのタイが多い。
ウーリン(woollen)とウーステッド(worsted)の違い
ウーリンは、「羊毛製の」という意味の古語(英語)で、梳毛糸(そもうし)だけから織られた織物である。梳毛とは、羊毛を採取し、短い毛を取り除き、長い毛だけを揃えること。これに対してウーステッドの辞書上の意味は、「梳毛糸」だが、もともとは英国ノーフォーク州の地名である。600年ほど前、そこで梳毛糸が生産されたためその名がついた。ウーリンは梳毛糸のみで織られるが、ウーステッドは、梳毛糸、または他の糸を混ぜて織られる。そこが両者の違いで、ウーリンに属する織物は、フランネル、ツイード、ドスキンなど、ウーステッドに属する織物は、サージ、ギャバジン、などである。現在はウーリンという言葉は、ほとんど用いられていないが、歴史と言葉を遡り、正確さを期すならそういう分類になる。
WOOL / ウール / 羊毛
天然繊維は植物系と動物系に大別される。植物系には綿花、麻、レーヨン、などがあり、動物系には羊毛やカシミア、モヘア(山羊)、キャメル(ラクダ)、リャマなどがある。動物系は「羊毛」(ウール)と「獣毛」(アニマル・ヘアー)に分類するのが一般的。
「羊毛」と感じで記すと、明らかに「羊の毛であることがわかるが、英語でWOOLと書くと、「羊の毛」だけを意味する場合もあるし、通常使われるカシミアのように細い毛を含む場合もあり、ちょっとややこしい。
ウールチリメン
上質の細番手梳毛糸を使い、S撚、Z撚の強撚を1本1本または2本2本の配列にして織り上げ、整理工程でシボ出しをおこなう。ドレープ性に富み、小さなさざ波状の表面感を持った上品な織物。
ウールとシルク
ウールは融通自在で可逆的である。大胆なカッティングは言うまでもなく、蒸気や圧力や複雑な取り扱いの影響をものともせずにウールは仕立て屋の意のままに伸縮させたり湾曲させたりすることが、歪みや小じわを作ることなく着る人の身体の動きや形に従い、それを補って、美しく見せることができる。このようなウールは、デザイナーの創造的な願望に忠実であるという点で、彫刻に用いられる素材とよく似ている。
一方シルクは素材そのものの権威を主張する。ロココ時代の風潮に似合った、単純な裁断によるシルクとベルベットの上着は、着る人がかすかに動くたび、またボタンがわずかでも引っ張られるたびにシワを作っていた。この繊維が全く伸縮しない性質を持っていたからである。
ウールの特徴
合センの服は、雨にあたると給水紙のようにすぐに水を吸ってしまうのに、オール・ウールの服は、多少の雨なら水滴となって、はたけば落ちてしまいます。このことは汚れにも強いことになります。
このように水をはじく性質と矛盾するようですが、ウールの吸湿率は常温・常湿の時で15%、高温・高湿の状態では水分を30%近くまで吸い、センイの中では最も高いのです。しかも外気の状態によっては、逆に内部の水分を発散するという不思議な機能を持ってます。汗をかいても、ウールの衣料は水分を外へ放出するので蒸れることがありません。赤ちゃんの肌着や、汗をかくスポーツウェアによく使われるのはこのためです。
激しい風雨にされされて遭難した登山隊の中で、ウールの肌着を着ていた人だけが助かったという実話がありますが、これは水分を吸収する時に発する熱の量はウールが最も多いためです。
ウールの特徴(2)
合センの服に煙草の火を落とすとアッという間に穴があいてしまいます。ウールの服の場合は、すぐにはらい落とせば穴はあきません。このように羊毛センイは燃えにくい性質をもっています。
そして、燃えた場合でも、溶けずに炭化するので、皮膚を火傷から守ってくれます。旅客機のシートやカーペットにウールが用いられているのはこのためです。
ウール衣料は「空気を着る」といわれるくらいその中に大量の空気を含んでます。これは羊毛センイ特有のスケール(表面を覆っている鱗状のもの)とクリンプ(波状の縮れ)が、人体とセンイの間に「すきま」をつくり、そこに空気をためているためです。空気は熱の伝導率が非常に低いので、外気の冷気や熱気を遮断してくれます。ですから、防寒だけではなく、炎熱の砂漠に住む遊牧民も、熱気を防ぐためにウールを着ています。
ウールの性質 ~ウールは汚れにくい~
ウールの表面は、とても撥水性の高い物質でおおわれている。だから汗などの湿気は繊維内部に吸収するけれど、アメなどの水滴は表面ではじいてよせつけません。小雨ぐらいではほとんど濡れないのはこのため。泥などの水溶性の汚れも繊維表面ではじくので、内部まで滲みこむことはない。ウールは汚れにくく、しかも汚れが落ちやすいクリーンな繊維である。スーツを頻繁にクリーニングに出すのはこうしたウールの性質から考えてもお勧めできない。日頃のメンテでウールの汚れは回避できる。クリーニングに出すと多かれ少なかれ生地を傷めることになる。
ウールの性質 ~抗菌機能~
ウールはもともと羊の皮膚が変形して生まれたもの。研究によって、ウールにも羊の命を守るための免疫機能が備わっていることがわかってきた。生まれながらにして細菌に対する抗菌機能や消臭機能を持っているウールは、ますます衣服にふさわしい素材といえる。
ウールベースの混紡素材(ex.ウール×シルク、ウール×コットン)
ウールにコットンやシルクなどの繊維を混紡し、あえて自然なシワ感が出るように仕上げた光沢素材。ドライ感のある独特のタッチが特徴で、深い玉虫調の光沢がシャープな優美さを演出する。
ウールポーラ
強撚糸を平織りにした生地。気孔に富み、通気性があることから、ウールポーラも夏の代表生地といえる。ポーラというのはアメリカの紡績メーカーが命名した。
ウーレンサージ
紡毛サージ。経に梳毛糸、緯に紡毛糸(あるいは経緯ともに紡毛糸)を使って、2・2の右綾に織ったサージ。
ウール・マーク
国際羊毛事務局(IWS)では独自の品質基準を設け、合格した製品には「ウール・マーク」をつけることができます。ウール・マークは「良質のウール製品をひと目で判るように」という趣旨で定めたものなので、毛織物だけに限りません。
その基準は、1、羊毛から刈り取られた新しい羊毛(NEW WOOL)であること。2、飛び込みなどによる他のセンイの混入率は0.3%以内であること。3、装飾用としての他センイの混用率は5%以内であること。
エポーレット(Epaulet)
肩章。元来は軍服に用いられた金や銀の編み紐飾りを指し、兵科や階級などを示すものとなっていた。現代では特殊な正装以外にはほとんど用いられず、トレンチやその他のカジュアル・ウェアなどに付けるショルダー・ストラップ(肩帯)のことを指す場合が多い。
裏地の話
一枚仕立ての服よりも裏地を付けた服のほうが涼しく快適です。それはなぜか?一枚仕立てだと身体から常時発散されている気体の汗がこもって飽和状態になり液体の汗をかきます。例えば合繊のキャミソールドレスを着た女性は「こんなに薄い服なのに何故こんなにも暑くむれるのか?」とお思いになることがあります。天然繊維(EXコットン)の裏地はこの「気体の汗」を繊維一本一本の中に吸い込み吐き出します。(吸放湿性能) 気体の汗をきっちり吸い取って吐き出してくれるのです。
だから、一枚仕立ての服より、裏地を付けた服のほうが涼しく、むれず、快適なんです。
ウーステッド(Worsted)
織物に使われる毛糸は、梳毛糸(ウーステッド・ヤーン)と紡毛糸(ウーレン・ヤーン)とに大別される。梳毛糸は、製造工程中繊維を櫛で梳くようにして作るのでその名がある。従って繊維を並行に並べた状態で糸にするので細い糸を作ることができる。この梳毛糸を使って織物にしたものを総称してウーステッドと呼んでいる。
なお、英国ノーフォークにあるWorstedという村落で、薄手でしっかりした織物が始めて織られたのがこの名称の由来とも言われている。
上衣の裾丈
クラシックな上衣の裾丈は、両手を下げ指の第一関節と第二関節の中間あたり、2つの関節を曲げてできるYの字型の支点(3本の線が交わる点)までである。折り曲げた指で上衣のを包み込むような感じがよい。具体的には、上衣の両サイドのポケット上端から23~25センチ程度の長さで、身長の高低にかかわらず、そのあたりがもっともプロポーションをひきたててくれる。
上衣のネーム
上衣の内側に持ち主の名を刺繍する習慣は、日本の座敷制度から生まれた。仲居さんが上衣を預かり客に戻すとき、持ち主を間違えないよう名入れが定着したのだ。名札のようなものである。
日本人はそれほど似たようなスーツを身につけているのだ。テーラーメイドのステイタスなどという人もいるが、上衣への名入れは西洋では見たことがない。
英国スタイルの特徴
英国を中心とするゲルマン系のスーツは、人体のラインを忠実になぞり、ウェストを絞り込み、ナチュラルな方の傾斜と、やや角ばった肩、広めの衿、美しいドレープが大きな特徴で、これはロンドンのサヴィル・ロウのテーラーの注文服をベースにしている。ドレープは背中や胸に出る布地のゆとりからくるヒダ(襞)で、英国スタイルは特に胸のドレープが美しい。
サヴィル・ロウは、19世紀からの歴史を持つ伝統的なロンドンのテーラー街で、歴代の英国王室や貴族達の御用達で知られ、世界でもっとも着こなしが巧みなチャールズ皇太子も、サヴィル・ロウの老舗ハンツマン&サンズでスーツを仕立てている。
英国素材
スーパー100’sなど細番手の柔らかな素材とは異なり、コシがあり、ウエイトのあるタイプが代表的。軽さを重視したスーツが注目されたことから、しばらく話題にのぼらなかったが、最近になり袖山やひじ、胸の部分など立体感が要求される部分を丁寧にアイロンでおさえながら、ボリュームを出す仕立て方法に適していると再評価を得ている。無地のみならず、ウィンドウペーンやタータンチェックなどもある。
英国風の仕上げ
英国風と言えば、ウェストラインをキリキリと気持ちの良いほど絞り上げ、やや固めのショルダーライン、深いサイドベンツ、ボタンの位置の高いベスト、というクラシックなスタイルである。
英国のモヘヤ
英国のモヘヤ・メーカーの基本的な考え方は、モヘヤの特性である「張り」と「光沢」をいかに殺さずにモヘヤ服地を作るか、ということを最優先に考えてます。
このために、伝統的な英国のモヘヤ糸は、「フライヤー」という特殊な紡績機械で糸にします。そして、紡績上がりのモヘヤ糸を、そのまま緯管に巻いてシャットルに入れてしまいます。普通の毛糸は紡績上がりのコーンの状態から、緯管に巻き返すのですが、巻き返しによるモヘヤの毛羽立ちを防ぐために、直接緯管に巻き取ってしまうのです。
このやり方は能率が悪く、糸ムラなどの欠点をチェックできないというデメリットがありますが、これを承知の上でモヘヤの「張り」と「光沢」を殺さないことを優先させているのです。
英国毛織物について
毛織物と言えばMADE IN ENGLANDを思い浮かべるくらい、英国が毛織物では最も古い歴史と伝統をもっている―――と思い込んでる人が多いと思います。
ところが実際にはそうではないのです。確かに英国では沢山の羊が飼育されいて、毛織物の原料である「羊毛」の生産地、供給地としての歴史は古いのです。しかし、羊毛を加工して織物にした産地としては、フランドル地方(今のベルギー西部)の方が遥かに古いのです。
海一つへだてて、英国からの原毛を用意に入手できたフランドル地方で織られた毛織物は、8世紀頃から活況を呈し、スペイン、北フランス、フランドル、イタリアなどの港から世界各地へ船積みされるようになりました。
フランドル地方から、レンブラント、ルーベンス、フェルメールなどの絵画の巨匠が輩出したのも、毛織物による富の蓄積がそのバックにあったものと言えます。
Aライン
胸のあたりでぴったりして、裾にかけてひろがるシルエット。エンパイア・ラインともいう。1947年から50年、クリスチャン・ディオールが活躍したパリの第2期オートクチュール時代は、「ラインの時代」ともいわれている。AラインのほかH、Y、コロール(花冠)、ジグザグなど、美しいラインの服がつぎつぎと発表された。クチュールの手のこんだ技術に裏付けられたひゅくづくりの時代に生まれたシルエット。
エスカイア・ノット
ネクタイの結び方の一種でセミ・ウィンザー・ノットの別称。その昔、アメリカのメンズ・マガジン「エスカイア」が紹介した結び方といわれる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P186)
エドワーディアン・ルック
イギリス国王、エドワード7世(1841~1910)の時代に流行したロマンチックなスタイル。ベル・エポックの時代風潮を反映した優美なシルエットを特徴としている。衿は大きなボナパルトカラー、ダブルブレステッドで肩幅は狭く肩先が盛り上がり、長い上着丈でシェープドラインが大方の特色として見られる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P186)
エドワード・グリーン
ノーザンプトンで靴作りに手を染めたのは1890年。大英帝国が誇る屈指のシューズブランドである。バッキンガム宮殿の近衛兵のブーツ作りで知られる。足首と土踏まず部分への強いフィット感は上質なウェルト、伝統的な釣り上げや牽引のための素朴な工具、また経験豊かなクラフトマンたちの技によるものである。マシンメイドでは決して味わえないこの独特のフィット感は結果として長時間履きつづけても疲労しにくいという最大の利点を持つ。
エドワード八世(公爵ウィンザー)
現代紳士服の規範は1920年頃までに英国王室や延臣たちを中心に確立され、「英国の影響」として欧州大陸やアメリカに広まっていく。なかでも中心的なはたらきをしたのが、進取の気風に満ち新しいものに挑み続けたエドワード八世(退位後 公爵ウィンザーを名乗る) であった。ウィンザー公の名が広く知られているのは、王冠を捨てた世紀の恋といわれるシンプソン夫人との結婚だけによるものではない。
「伝統を離れて全てに無造作な振る舞い」とか「礼儀正しさと無頓着さの絶妙のバランス」などと、その挙措動作が伝えられる。旧来の伝統から離れた大胆な公の行動と、その着衣に対する試みの数々はそのまま現代に生き続け、二十世紀の最大のスタイルセッターとして、またイノベーターとしての名声を、こんにちなおほしいままにしている。
ハーディ・エイミス卿が書いている。「皇太子時代のエドワード8世と仲間たちが、テーラーたちと図り、カットやトリミングの詳細(ポケットやボタンの位置)を考えてきたのである。プリンスは(中略)テーラーを宮殿に呼ぶのではなく、自ら店を訪ねていった。服はプレタではなく誂えであった。客もテーラーも伝統に対して深い思い入れがあり、双方ともにイノベーションにどの程度についていけるかを心得ていた」(from 「ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服」)
エナメル・シューズ → パテント・レザー・シューズ
光沢感の強いエナメル革でつくられた靴の総称。婦人靴にも見られるが、多くは礼装用の紳士靴に特有のもので、オペラパンプスなどとして知られる。このエナメルレザーという素材名は日本独特のもので、英米ではパテント・レザーというのがふつう。またイギリスではこれをとくにペイタント・レザーと発音することが多い。パテント(ペイタント)とは「特許、特許権」という意味で、この素材が特許を得てつくられたという伝説からきている。
FIMT
フェデレイション・インターナショナル・オブ・マスター・テーラーズの略称。国際高級テーラー連盟のことで、ヨーロッパ主要国のテーラー団体、FMMTが母体になっている。年1回、各地でファッションショーによる新作発表を行い、世界のカスタムテーラーに強い影響を与えている。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P187)
エポーレット
肩章のこと。もともと軍服のディテールデザインで、将校の地位を示すバッジをつけたり、肩から銃や双眼鏡を下げるときの留め具としての役割を持っていた。正式名称はショルダーループ。
エルボーパッチ
補強用ほ肘当て。英国スタイルのカントリー調ツイードコートなどについている。素材は表皮、スエード、丈夫な綿布などが使われる。
エル・シェープド・ラペル
背広の衿型の一種。上衿が下衿よりも幅が狭く、衿刻みがL字型になったラペルのこと。変わり衿型で、コンテンポラリーモデルに見られる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P187)
「エレガントというものは
ルールを全部飲みこまなければできないことだ。
シックと混同する人がいるが、
シックはパーソナリティやキャラクターが入ったもので、
エレガントとは違うものである。」
(BY フランコ・ミヌッチ)
<補足 それ自体、あまりエレガントなものは危険である。>
エレガントなクラシックスタイルを試みるための購入順位
- ブラウン系のストレートチップの靴
- 紺地に白のピンドットのネクタイ
- ブルーまたは白のワイドカラーのシャツ
- 紺色のホーズ
- 鉄紺色にチョークストライプが入ったシングルのスリーピース
- チャコールグレーのツーピース
- 鉄紺色無地のダブルのスーツ
エレファント・ベル
極端に裾が開いたベルボトム・スラックスのこと。「象のような」形容で呼ばれるように、35cm以上の裾回りをもつものである。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P187)
OIL SPUN オイルスパン紳士服地
羊の種類は世界中で3000種類もあり、大きく分けるとメリノ種、雑種、未改良種の顔に近い背と両脇から得られる最高の羊毛を使用しています。これを経験豊な職人が、本来の英国式紡績製法である「オイルスピニング」というプロセスを通り、よりすぐれた風合いの高品質梳毛毛糸を紡いでいます。さらに織り上げる際にも、現在主流を占めている高速織機ではなく、英国古来のドブクロス織機を使用し、仕上げも入念で定評のロンドンシュランク施すなど、一貫して、贅沢な、いわゆるハンドメイドの織物です。
オイルスピニングとドライスピニングの違い
現在、ほとんどの服地メーカーが合理化のため高速機械を使用しています。この場合はドライスピニングという方法を用い、水に対するオイルの割合を0.75~1%位に調整しています。
オイルスピニングはオイルの割合を3.65~4%くらいにセッティングし、現在ドライスピニングに起きている品質の低下を防いでいます。
オーダーメイド = カスタムメイド、ビスポーク
オーダーメイドというのは、レディーメイド(既製服)に対する注文服のことで、完全な和製英語。アメリカでは「カスタムメイド」というのがふつうで、これは「注文の」とか「あつらえの」という意味になる。つまり、特別(カスタム)仕立ての服ということ。また、メード トゥ オーダーというのも英語圏ではよく聞く言葉で、これはメード トゥ インディヴィジュアル オーダーということになる。つまり「個人の注文に応じてつくられた」という意味。イギリスでは「ビスポーク」という言葉が使われる。ビスポークとは「話し合ってつくられる」という意味で、客とテーラーとがよくよく話し合うことによって、よりよい服を作ろうとする姿勢があらわされている。こうした注文紳士服店をカスタム・テーラー(米)とかビスポーク・テーラー(英)といい、そうやってできた背広をカスタムスーツ(米)、ビスポークスーツ(英)と呼んでいる。日本では単にテーラー、そしてオーダー服という言い方が普通である。
オックスフォードグレイ(Oxford grey)
濃い霜降のグレイのこと。
オックスフォード・バッグズ oxford bags
スラックスの一種。1920年代に、英国オックスフォード大学の学生達が使い始めたころから流行した。極端に太いシルエット、ちょうど、バッグ(袋)のような形であることからこの名がつけられた。股上が深く、広いウェストバンドがつき、一本あるいは二本のタックをとり、ヒップから裾にかけて太いままのシルエット、裾の折り返しは深く付けられているのが特徴。バギーパンツの原型。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P188)
オックスフォード地
正しくは、オックスフォード・クロス(oxford cloth)。スコットランドの繊維会社が、オックスフォード、エール、ハーバード、ケンブリッジの四つの大学の名をつけて、シャツ地を作ったうちのひとつ。ザックリした表面地が特徴。現在では、オックスフォード・クロスだけが残っている。
男の衣服の上品な配色(カジュアル編)
男の衣服の上品な配色は、多くて3色。ただしこれはスーツスタイルの場合だ。スーツスタイルは、スーツ自体の面積が多いため、他の色は沈み込む。
カジュアルウェアは、それぞれが面積と色彩を主張する。柄物であれば、色は数倍にもなる。配色の配分を一つに絞込み、残りは、その絞り込んだ色の飾りと考える。
例を挙げるなら、えんじのポロシャツと薄いブルーの丸首のサマーセーター、同系色のズボン。黄色いポロシャツと濃いグリーンのブルゾン、クリーム色のズボンの類である。
ポイントは①重ねた衣服を簡潔に見せる。②余分な配色は避ける③インナーにはカラフルなシャツを。
男の宝飾品(1)
男の宝飾品の中でもっとも古い歴史をもつものは、シグネット・リング(印章付きの指環)。これは署名に先立つ身分証明の道具でもあって、古代ローマ時代すでに使われていた。シグネットリングをはめる権利は特権階級にだけ与えられていたから、富裕であることの証明でもあった。金の指環の一部を打出して、ここに印章を刻んだ。
シグネットリングは印章や紋章、その持ち主自身のシンボルを刻み込むものであった。が、現在では印章の変わりに貴石などをあしらうことも少なくない。
オーダースーツのポイント
テーラーでオーダーを試みる際、気を使わなければならない点は二つある。まず生地見本である。大きなテーラーであれば、着分の素材(一着分の生地)が豊富に陳列されているので仕上がりはおおざっぱではあるが予測できる。(実際に、生地を肩から胸にかけて当ててみるとイメージしやすい)
だが、小さなテーラーになると、物によってはサンプル(はぎれ,バンチ見本)しか用意してないため、小さな生地見本から選択しなければならない。オーダーに慣れていない人は、この段階の失敗が多い、ストライプ幅、チェック柄、色の明暗など、見本と仕立て上がりに誤差が生じるためだ。
サンプルでは適当だと思ったチェックが、仕立てあがりでは細かすぎた、仕立てあがりの色が違ったなどの苦情がでるのはそのためである。あらかじめチェック柄をオーダーすることが決まっていれば、手持ちのチェックのスーツを着ていき、袖口のあたりにサンプルを当て比較してみると分かりやすい。
次にテーラーメイドは、不変的なプロポーションで、世界中どこでオーダーしても、仕立てあがりのスタイリングは不変であることを知るべきである。顧客が難しい注文を出さなければ、英国スタイルのビジネス主体のオーソドックスな服ができあがる。
オーダーの基本的な役割は、スタイリングではなく、可能な限り顧客の体にフィットさせ、動きやすいスーツを作る。顧客の好みを取り入れる。この二点だけである。好みとはサイドベンツがいいか、上衣丈は短めがいいか、三つボタンにするかなどだ。
体に馴染んだスーツを着ていくのが、テーラーには解りやすい。ただしデザイナーズスーツは避けるべきだ。デザインされた服と、顧客の体を忠実になぞっていく服のあいだには、大きな隔たりがある。
デザインされた服は、当然ながら念頭にデザインの発想があり、次にそのデザインのためのマテリアルと縫製技術が考慮される。技術とは、例えばレディス感覚のドレープ作りである。両者は、素材も異なる。
馴染んだ服を参考に、好みをはっきり主張し、あとはテーラーに任せる。オーソドックスなスーツをオーダーするポイントである。
男の前開きについて
1934年当時すでにマウントバッテン伯爵は前開きにファスナーを配したトラウザーズを穿いていたが、その普及にはかなりの歳月を要した。気づかないうちに開いたり、金具に挟まれて痛い思いをするのではないか、などと心配したのであろう。
サヴィル・ロウのある仕立て人はこんな経験をしたことがある。それはまだアシスタントの時であったが、客から電話があり、ファスナーなる新趣向についてさんざん文句を言われてしまった。意気消沈してその一件を報告した。「なんでも例のものをファスナーに挟まれて、5針も縫ったそうで、もうカンカンですよ。」と。すると親方は言った「なんと、虚栄心の強い男だ。5針もだなぞと・・・。」
さてさて、最近ではナイロンファスナーが使われることが多く、途中で動かなくなることはほとんどなくなったので、例のものを挟む心配はないのである。また、こだわりで前開きをボタンにする人も増えてきている。
オックスフォード
スラックスの一種。1920年代に英国のオックスフォード大学の学生達が使い始めたことから流行し、この名が付いた。極端に太いシルエット、ちょうどバッグ(袋)のような型であることから、この名が由来している。股上が深く、広いウエストバンドが付き、1本あるいは2本のタックをとり、ヒップから裾にかけて太いままのシルエット。裾の折り返しは深くつけられている。
落とし穴(眠り穴ボタンホール)
ボタンの穴かがり(糸でかがる方法の一種。通常はボタンを通すための穴があけられるが、布面に穴をあけずにかがる。装飾的な意味合いが強く、ラペルなどに用いられる。
オットマン
縦に細い梳毛糸を織り込み、横に太番手の糸を引きそろえて打ち込んで織ったもの。横の畝が太くハッキリ出た織物でコート、ジャケットに使われる。
オートミール(oatmeal)
経は白、緯は黒または濃色を配して大麦の粒(オートミール)のような形を表現したもの。猫の足型に似ているところから、我が国では「猫足」ともいわれてます。
オーバーコートについて
防寒というコートの第一の使命を、文明の発達が曖昧にしてしまった今、我々は、そこでまずオーバーコートの最初の選択に迫られる。「実用」を選択するか「エレガンテ」を選択するかである。(伊語のエレガンテは英語のエレガンテと同意。上品で優雅なさま。通常女性に対して使う賛辞だが、男性に使うときはファッションも含めて最高の誉め言葉になる)。
ここであえて「エレガンテ」という言葉を使ったのは意味がある。コートはそれを羽織る人全体を、前も後ろもすっぽり覆ってしまう。上質のコートであれば、自分のプロポーションはほとんど気を使わずに済む。人目に晒されるのはせいぜい膝から下ほどである。狭い肩幅も、短い脚もそれなりに隠して美しいシルエットを強調してくれる。襟元はマフラーなりストゥールで隠せば済むことだ。その点で、他のファッションアイテムに比較し、オーバーコートによる大胆なダンディズム表現は群を抜いている。
オーバーコートのエレガンテ
「エレガンテ」は一言でいえば「裾さばき」に尽きる。メンズ・レディースを問わず、裾の長いウェアを美しく着こなすためには、とにかく裾さばきをいかにすっきり見せるかにかかってくる。和服を巧妙に着こなす女性の裾さばきと同じ理屈である。巧みな裾さばきの条件は、しなやかな生地の選択である。柔らかくしなやかな生地のトップは、何といってもヴィキューナであろう。糸の細さは13ミクロンである。次に13から14ミクロンのグァナコ、そして16~18ミクロンのカシミアであろうか。二瘤(ふたこぶ)らくだのキャメルが、それに次ぐが、現在市場に出回っているものは、ほとんどがラクダ色をしているだけの紛い物である。
(弊店で100%ピュアカシミアのコートのは45万円よりお仕立ていたします。)
オーバーコートについて(クラシックなコートとデザイナーたちのコートとの相違)
クラシックなオーバーコート作りが巧みなのは、アクァスキュータム(英)とブリオーニ(伊)であろうか。デザイナーズブランドでは、ジョルジオ・アルマーニ、ジャンフランコ・フェレ(共に伊)だ。両者の違いは、スーツ同様デザイナーズブランドのほうが身頃感があり、裾丈がやや長いことだが、スーツほど鮮明な相違は無い。オーバーコートが、ジャケットなりスーツの上に着るべき範疇のアイテムと限定されているためだ。したがって、線引きの許容範囲はずっと広く、デザイナーズブランドは必ずしもクラシックではないが、クラシックに非常に近い場所に位置している。
これは一つには、オーバーコートは、常にある条件(防寒・冬)のもとで着なければならないことと、もう一つは、デザイナーたちが「エレガンテ」を目指した結果、余分なデコレーションが削ぎ落とされ、必然的にクラシックに近いラインになったためだ。他の類のコートでは、素材もスタイルも思いきった遊びを取り入れているにもかかわらず、ことスーツ用のオーバーコートに関しては、シンプルこそ優雅につながることを、デザイナーたちはよく承知している。ただ、彼らが譲れない部分は、両者の相違点である幾分長めの裾丈と幅広の身頃で、これは彼らが目指すコートの「優雅さ」の表現のための手立てで、いうなればデザイナーたちの美意識でもある。彼らのコートの裾は、大方ふくらはぎの中ほどまである。これに対しクラシックなコートは膝が隠れる程度だ。
したがって、オーバーコートは、スーツのように、クラシックだから、デザイナーズブランドだからという制約による選択は、あまり気にかける必要は無い。裾さばきの良い素材と上品なシルエットという条件を達成すれば、後は自分の好きなコートを自由に着こなせば良い。おそらくそのコートはどんなスーツにでもフィットしてくれるはずである。
オーバーコートの実用性
「実用」は、当然のことながら「軽くて温かい」ことである。ところが厄介なことに、コートに限っていえば、重い素材のほうが温かい。
第一次世界大戦でイギリスの兵士達が愛用した「ブリテッシュ・ウォーム」がいい例で、厳寒のアウトドアでは、とにかく重量があるもの、例えばメルトン(ラシャ)やギャバジンといった、糸の打ち込みが密な素材を選択することが温かさにつながる。防寒だけにこだわるなら、軽さは犠牲にしなければならないのだ。しかしながら現在の平均的ライフスタイルでは、それほどヘビーなコートは必要とされず、もし、それでも「実用」本位を目指すならば、日本の気候風土と自分が実際にオーバーコートに袖を通す時間を考慮して、ジャケット用のかさばらない生地を選択するか、何%かのカシミアが混じった素材、あるいは薄手のコートの裏にライナーを取り付ければことは済む。
オーバーコートのスタイル
オーバーコートのプロポーションを美しく見せるためには、装飾性は不要である。シンプルこそベストだ。ターンナップ(カフス)やベルトは、トレンチコートやレインコートのアクセサリーとしては、それなりの役目を果たすが、地厚のオーバーコートでは不要である。上から下まですっきり見せるには、必要最小限のアクセサリーで十分である。襟やフロントの合わせ部分のステッチも必要ない。本来ステッチは(スーツも同様だが)二つの意味を持っていて、一つはオーバーコートのプロポーションをシャープに見せること。もう一つは作り手の手のかかりようを強調するための、顧客に対する言い訳のようなものである。プロポーションによっては確かに必要なステッチもあるが、ステッチが逆にコート全体のシルエットの切れ味を悪くする場合もある。
全体のシルエットは、ウェストを絞ったチェスターフィールド型が基本だ。袖口は、スーツの袖口プラス3センチほど。センターベントは、裾さばきを良くするために深めに切ったほうが見場はいい。
この時期(春)にオーバーコートを!
オーバーコートの素材はウール、カシミアプラスほかの素材、余裕があればカシミア100%がよい。カシミアもひところに比べると価格が落ち、十万円以下のオーバーコートもある。シーズンを過ぎればさらに安くなる。(弊店ではコートもフルオーダー・上質カシミアですから、30万円以上になります。)
基本色は、黒、ダークブルー、チャコールグレイの三色。オフホワイトより、ズットコーディネイトしやすい。
どんな素材でも靭かで柔らかいものを選択する。
裾丈は膝下10センチ以上とる。日本人のコートスタイルのアンバランスは、オーバーコートに限らず、裾丈が短すぎることに尽きる。輸入物、国産物ともに、ショップに並んでいるコートは、日本人の平均的体型を十分承知した上でのサイズなのだ。袖丈は詰めてもいいが、裾丈は絶対にいじらない。これは基本である。
とくにデザイナーズブランのオーバーコートの裾詰めは厳禁である。コートバランスが大きく崩れ、ミリ単位で綿密に計算された均衡を著しく損なう。
春夏のスーツより、この時期に靭かなオーバーコートを一着。価値はある。
オーバー・ザ・シート・レングス
ジャケット、またコートのコートレングスについていわれる。シート(尻)が隠れる程度の長さのこと。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P188)
オーバーシューズ(ティングレー)
雨用のオーバーシューズで、踝の上までくる深いものは、「ガロッシュ」、それ以下の浅いものは単に「ラバー」と呼ぶ。こういった至便性にとむ実用的なアイテムは、なんといってもアメリカ製であろう。アメリカ人はとにかく自由で便利なものが好きである。ティングレイ社はニュージャージー州にあるラバー製品では知られた企業。SMLの3サイズだが、Sサイズで24.5センチ~26センチ、平均的な日本人サイズである。ストレッチラバーを使用しているため、履きやすいばかりか耐久性にも優れている。
オーバー・チェック
グレン・チェックなどの格子柄の上に、さらに1本線の格子を乗せたもの。オーバー・プレイドともいう。
オメロピット
オメロピットとは、単に胸を膨らませるのではなく、前見頃のアームホール周辺に経てに入るゆとりジワのこと。(= イングシッシュドレープ)
オープン・シャツ → オープン・カラー・シャツ
オープン・カラーという首元が開いた形になった衿型を特徴とするシャツ。俗に「開襟シャツ」の名で知られるもので、日本では夏の男のシャツとして多く用いられた。したがって、正しくはオープン・カラー・シャツというべきで、オープン・シャツというのは日本独特の名称となる。オープン・カラーは小さなノッチラペルを特徴としており、別にパジャマ・カラーとかキャプテン・カラーということもあるが、これも日本的な俗称である。
オール・イン・ライン
4個から8個ボタンのダブルブレステッドの上着で、ボタンの配列が垂直で同幅になっているものをいう。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P189)
オルターネイト・ストライプ(Alternate stripe)~1~
交互縞。二種の違ったたて縞がたがいちがいに、すなはち交互に入りまじった柄で、縞柄は単純な場合と複雑な場合とがある。同色の縞糸ではなく、色違いの縞糸を使って一本おきの縞にしたものもある。この縞が格子の時はオルターネイト・チェック(交互格子)という。
オルタネイトストライプ~2~
オルタネイトとは「交互の」という意味で、二種類の異なったたて縞が候後ン組み合わされた縞柄のこと。毛織物の柄として広く使われる。今年(2001)に入り、特に注目され、デザイナーズブランドのスーツにも多く見られるようになった。
オルトリーナ(oltlina)
世界でもっとも高価なメーカーだと言われているオルトリーナ。かつて日本がバブル経済だったときに少量輸入されていたようだが、現在ではほとんど見かけることはない。イタリアのコモで1888年創業の歴史を持ち、名実ともに世界でベストの生地であろう。シルクのようなコットンポプリンは一度触れると忘れられない。
オンブレ ストライプ
濃色と淡色とを同じ幅に配列し、レインボー状に表現した縞柄のこと。
オンブレ・ストライプ
一色の濃淡で影のような効果をあらわしたストライプ柄。影縞ともいい、縞の幅は等しくなっている。オンブレはフランス語で「影をつけた、濃淡をつけた、くすんだ色の」などの意味がある。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P189)