サ行
採寸時の注意点
採寸される時、ほとんどの人が普段の姿勢をはるかに越えた「いい姿勢」になってしまいます。これではそっくり返ったスーツができてしまいます。リラックスして普段通りの姿勢で採寸に挑んでください。
サイドシーム
サイドシームとは、パンツの脇にある縫い目のこと。縫い合わせ方は、その場所、目的によっていろいろな方法があるが、長い縫い目はミシン縫いの方がほころびにくく、キレイに仕上がる。
サイド・ベンツ(Side vent)
背広,上着の後ろの割れ目(ベンツ)の一種。両背脇が開いてるもの。「剣吊り」とも呼ぶ。背中の中央の割れ目(ベンツ)はセンターベンツと呼ぶ。
サイドポケット
パンツに対し直線的につけられているのがストレートサイドポケット、斜めにつけられているアングルドサイドポケット、装飾用のデザインポイントになるパイピングポケットがある。この中で一番多いのはストレートサイドポケット。
サイ・レングス
サイは「太もも」のこと。つまり、ネックライン(首線)から太ももまでの丈の長さを表わす。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P196)
サイロスパン(Silospun)
IWSが開発した特殊な梳毛紡績方式。サイロスパン方式は、梳毛の単糸製造工程でそのまま合撚糸する製法。双糸にしたり、糊付けしたりする後加工をしないで織ることができ、細番手の糸が容易に紡げるのと、毛羽立ちが少ないのでクリアーな外観を持つことが特徴。
サヴィルロウ スーツ
ロンドンのウエストエンドにあるテーラーが集まった通り、サヴィルロウの名は「背広」の語源とも言われる。ビクトリア朝以来の英国の、さらには世界の男の服の原型はここで生まれた。その典型はイングリッシュドレープ(襞)で胴が絞られた仕立ての三つ揃い。1920年代から30年代がその全盛期。
サキソニー(Saxony)~1~
メリノ種の紡毛で織られるツイードの一種。はじめ、ドイツ南部のサキソニー地方産のメリノ種を使っていたことからこの呼び名がある。
サキソニー~2~
ドイツ、ザクセン地方の優良メリノ羊毛、あるいはこれで織られた紡毛(比較的短い羊毛組織を用いているため糸の表面に毛羽が多い)か、梳毛(羊毛繊維をくしでけずって平行kに並べる操作をいう。比較的長い毛種の羊毛をできるだけ平行に並べ、これを合わせて引きのばし、しだいに細くして撚りをかけた糸を用いた)織物のこと。現在では、オーストラリアなどのメリノ羊毛を用いて、柔らかく仕上げた紡毛織物を指す。弾力性に富み、スーツ地にも用いられる。
サクソニー
メリノ種の紡毛で織られたツイードの一種。細番手の紡毛であることからフラノとメルトンの中間的な風合いを持つ。ツイードでは比較的目のつんだもの。最初、ドイツのサクソニー・メリノを原料として作られたため、この名称が生まれた。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P196)
サーコート(Surcoat)
元は甲冑の上に着たチュニックタイプの衣服。現在ではスーツの上に着るジャンパーとショート・コートの中間に位置するもの。
サーコート
ジャンパーとショート・コートの中間に位置するデザインと感覚のコート。俗に「ロング・ジャンパー」と呼ばれている。もともとの意味を和訳すると「陣羽織」となる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P197)
サージ(Serge)
斜めの方向の綾組織を持つ服地用織物の総称。語源はラテン語の蚕(Serica)からきており、元は絹糸使いの綾織物を指した。現在は最も実用的な無地の織物として、学生服、ユニフォーム、スーツ、スカートなど広範囲に使われている。
サージ2
いわゆる梳毛絨の中でも、古来最も馴染みの深い生地名の一つが、このサージという綾織物である。サージは英語であり、この英語が初めて登場したのは、14世紀といわれている。当初はSargeと綴られていたようであるが、16世紀頃から現在の綴りSergeとなった。
サージの原語は、フランス語で綾織物を意味するセルジュ(serge)から来たものとされ、またこのセルジュなるフランス名は、イタリア語で「絹と毛の交織布」を意味するセルジア(sergea)から来たものとされている。
サスペンダー → サスペンダーズ / ブレイシーズ
吊りバンドのことで、とくに「ズボン吊り」をさす。ズボンがずり落ちないように肩から吊り下げる一対の帯ということができるが、サスペンダーというのは実はアメリカ英語で、イギリスではブレイシーズというのが正しい。もっと古くにはギャロウジーズという言葉もあったが、これはもう使われなくなっている。なお、イギリスでサスペンダー(正しくはサスペンダーズ)というと、ガーター・ベルト(靴下吊り)の意味になる。
サスペンダー
サスペンダーは、18世紀に、股上の深いズボンを支えるアイテムとして登場した。当初は、実用本位で、編み紐製が多かったのだが、19世紀中頃から、柄をあしらったキャンバス、木綿、ベルベットなどの素材が用いられ、実用と同時に、お洒落のための色彩をそなえるようになった。
人間の複雑な動きに対して、ズボンは、上から吊るさない限り、どうしても下がってくる。とくに股上の深いズボンはその傾向が強い。
現代の股上の浅いズボンは、腰骨に引っかけるように履くのが特徴だが、それでも、始終動き回る人間の動作にはついていけず、やや下がり気味になる。ベルトだけでは支えきれないのだ。
サスペンダーは、ズボンの前後を吊ることにより、それを防ぎ、人前でズボンの位置を直したり、シャツの裾をズボンにたくし込む動作を避ける道具なのだ。礼服に使用されるのも、厳粛な席で、マナー違反を犯さないためである。特に燕尾服の場合はベスト丈が短く、ズボンの股上が深いため、脚を長く見せる効果もある。
着用時の留意は三つある。まず、外国製は長いものが多いので、購入時に調整してもらう。その時金具が胸のあたりにくるのが、もっともバランスよく見える。
次に、撫で肩の人は、肩からずり落ちる場合があるので、背中側の二股部分の支点を上げるよう調節してもらう。
最後に、サスペンダー用のズボンのウェストは、ベルト着用のズボンよりおよそ2センチ余裕をとる。
柄は自由だが、英国のサスペンダーメーカー「リージェント」によれば、「ネクタイの色との調和が前提で、同じ柄は避けるべき」だという。
タイとの調和という意味は、スーツ、シャツも含めた、全体の色彩のバランスである。初めて試みる人は、Vゾーン決定後、タイよりやや薄い同系色を選択するとよい。タイの色彩量が多い場合は、サスペンダーは、常に控えめにが基本である。
なぜ?礼装にはサスペンダー?
モーニングコートやディナージャケットにサスペンダーが必要なのは、これらのトラウザーズの股上が通常のスーツのものに比べてハイライズ(股上を深く)設計されていて、ベルトではずり落ちてしまうからである。サスペンダーはアメリカの呼び方で、英国ではブレイシーズ(braces)と呼ばれる。英国でいうサスペンダーは、アメリカにおける靴下留め(ガーター)のことになる。
サッカー(Sucker)
シアサッカーが正式な呼び名。タテの縞目の部分を組織的に縮ませ、波上の凹凸感を出したもの。清涼感がある夏用の綿でさらっとした肌触りが特徴。元来は東インド産の亜麻を使った織物。
サッカー(sucker)
正しくは、シアサッカーという。表面がリップ状になった、夏用の綿、または合繊維のこと。薄手でさらっとした肌触りをもつ。ストライプ、チェックの双方がある。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P197)
サックコート
サックコートは男子の平常着である背広の上着。サックとは「袋」を意味し、身体にゆったりとした短い上着を指す。ウエストに上下の切替線がなく、方前でボタンでとめる。身体線にぴったりとしたフロックコートに対するアメリカの呼び名である。
サテン
カマーバンド、ネクタイ、および夜の礼装用衣服の縁取りなどに使われる素材で、表に光沢があり、裏に光沢がない仕上げのシルク、ポリエステルなどの繻子織物(たてとよこの交差をなるべく少なくして、しかも、その交差点を連続させない織り方)。織り目が細かく柔らかい。
サファリ・ジャケット
サファリは動物狩りを意味し、本来はこの目的のために作られた。4個のフラップ付きパッチポケットの共地ベルト付きシングル・ブレストのシャツ・ジャケット。別名ブッシュ・ジャケット。
サーフェイス インタレスト
表面効果を強調した生地の総称、またそうしたテクニックのことをいう。起毛、ネップ、型押しなどでこれまでになかった新鮮な感じを出したもの。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P197)
サマー・ウール
夏向きにつくられたウール。現在はあまり見られないが代表的な素材にポーラ(Poral)がある。多孔性という意味のPorousをもじってロンドンのエリソン社が命名した商品で三本の単糸を、ポーラー撚りという特殊な撚り方の強撚糸を使って平織りにしたもの。風通しがよく、さらっとした感触が特徴。
サマー・キッド・モヘヤ(1)
厳密に言うと、「サマー・キッド・モヘヤ」という呼称は、モヘヤ3大主産地のうち、南アフリカ産のものにだけ使われます。
南アフリカとアメリカ・テキサスのモヘヤは年2回剪ります。
南アフリカでは、6~7月頃に仔山羊が生まれ、半年後の翌年1~2月頃に最初の剪毛が行われます。南アフリカは、南半球に位置していますので、1~2月は「夏」の気候となります。ですから、この最初に剪った仔山羊(キッド)の毛を「サマー・キッド・モヘヤ」と呼ぶのです。そして7~8月頃に剪る第2回目のモヘヤを「ウィンター・キッド・モヘヤ」と呼びます。
サマー・キッド・モヘヤ(2 )
アメリカ・テキサスでは、生後半年ではじめて剪るモヘヤを「フォール・キッド・モヘヤ」または「No1・キッド・モヘヤ」と呼び、「サマー・キッド・モヘヤ」とは呼びません。
またトルコでは、年一回剪りのため「サマー」と「ウィンター」の区別はなく、最初の年に剪ったモヘヤを「キッド・モヘヤ」と呼ぶだけです。
いずれにしても「サマー・キッド・モヘヤ」は、生後6ヵ月ぐらいの仔山羊から剪った、最初でしかも一生のうち一回しかとれない稀少価値の高いモヘヤで、繊度は細く(24ミクロンくらい)、しなやかでキメ細かい光沢をもっています。
なお、「アダルト・モヘヤ」といわれるものは、生後2年以上たったアンゴラ山羊から剪ったモヘヤを言います。
サマーブレイザー
19世紀にケンブリッジ大学はレディ・マーガレット・ボートクラブの選手が羽織っていた真紅のユニフォームに端を発する。それがあたかもアブレイズ(燃えている)ablazeのようであったところから、ブレイザーの名称が生まれたのである。サマーブレイザーは伝統的にシングル前であり、各クラブの色が採用される。今もサマーブレイザーはヘンリーロイヤルレガッタをはじめとする屋外でのスポーツ観戦に限って着用することになっている。
ZARA(ザーラ)
伝統的なヴェネツィアンマントを守りつづける家族経営のブランド。その仕立ても頑なまでにクラシック。マントの他に、欠かせないアイテムである帽子とネクタイも作る。きわめて独特だが、その優美な世界は圧倒的。
サルトリアーレライン
サルトリアは、イタリア語で仕立て屋の意味。したがって、サルトリアーレラインは、仕立て屋が作ったような(精度の高い)服のこと。
サルトリア・ナポレターナ
ナポリの仕立て屋。ミラノなどのスーツと比べて、装飾的なステッチを多様する傾向がある。縫い合わせ部分に片返しのステッチなどが代表的。マニカ・カミーチェ(シャツ袖)もナポリ的な仕立てといえる。初代カラチェニ、ヴィンチェンォ・アットリーニなどで知られる。
サン・クロス(Sun cloth)
見る角度によって太陽が昇るときのように色が変わって見えることに由来する呼び名。通常クレパネットの緯糸にカラフルな色糸を使ってこのような玉虫効果を出す。
シアサッカー
生地の表面にシボ(縮み)のある生地。表面に凸凹感があるので、サラッと着ることができ、清涼感に富む。夏はコードレーンと並んで使用される機会が多い。
自然の動き
大切なのは、スーツや靴を、いかに自然に自分の体にまとわりつかせることができるかである。自然にまとわせるためには、まずクオリティの高い素材を選択する必要がある。理由は、上質素材は、つねに自然の動きを約束してくれるからである。優れた素材は、つねに人体と共に縦横に変化し行動してくれる。決して人体に反旗を翻さないものなのだ。
たとえば、シワ一つとっても、クオリティの高い素材は、ウール、カシミア、麻、シルクを問わず、ナチュラルで細かく表現され、戻りも早い。逆に安価な素材は、シワの出方が大ざっぱで、例えば麻であれは、複雑な細かなシワの代わりに、ごわごわとした直線的な太い線が出る。シワも着こなしの一つの味であることを考えれば、ディテール云々より、まず素材選択した方が無難なのだ。
自然素材について(1)
クラシックスタイルには人工的なもモノは似合わない。
素材感をストレートに表現するのが、クラシックスタイルである。そのためには自然素材がもっともクラシックを創造しやすい。
上質な靴の皮の艶と、足をすっぽり包み込む履き心地、ネクタイの滑らかなシルクの手触りと光沢、締めやすさと緩みにくさ、ジャケットの肩をすっぽり被うウール独特の着心地は、天然素材だからこその味なのだ。
化学繊維は、天然素材があったからこそ生まれた産物で、すべては天然素材のコピーである。
時を経て日との体に馴染むのは天然素材で、それは天然素材が生きているからだ。天然素材と化学繊維の疲労度を比較すれば、すぐに分かる。着古した化学繊維は捨てられる運命にある。自然繊維は年輪という味が出る。
衣服素材のアレルギーは、多くの場合化学繊維である現実も忘れてはならない。
自然素材について(2)
スーツはウール、羊である。
シャツはコットン、木綿である。
ネクタイはシルク、蚕である。
靴は皮、牛である。
そして我々は人間である。
すべてが、生きた天然素材である。そこが重要なのだ。
人の体の複雑な曲線を被い尽くし、保護し、外見を繕うためには、科学を駆使して人工的に作り上げられたものではなく、あるがままの素材のほうが馴染みがよい。
生理的にも、自然の特性は人の感覚に直結する。
シルクのしなやかさ、ウールの保湿性、コットンの吸湿性は、人口素材では決して持ちえない特性である。
繊維には、自然素材と、人の手が加えられた科学素材がある。化学繊維は再生繊維と合成繊維、半合成繊維の3つに大別される。再生繊維の代表的なものはビスコース・レーヨン、いわゆる人絹である。合成繊維の代表的素材はナイロン、半合成繊維で知られる素材はアセテートである。
いずれも、近代の衣服素材として開発された。
化学繊維素材は、時代時代のシルエットと機能性と連動する。新たな化学繊維素材が開発されると、その繊維の特長を満足させるようなシルエットが登場する。逆に、衣服のシルエットや機能性のために、化学繊維が新たに開発されることもある。
だが、いかに天然素材に似せて作られているにせよ、すべての化学繊維そざいは、クラシックスタイルには不向きである
自然素材について(3)
羊はカインとアベルの時代の産物である。木綿は紀元前2500年頃からの衣服素材である。
蚕の起源は、中国で紀元前3000年とされる。ヨーロッパで絹1匁(もんめ)と黄金1匁が交換された時代があった。
革はローマ帝国の貴族たちの足元を飾った。
自然素材が人間にとり、最上で、もっとも着心地のよい衣服素材である事実は歴史が端的に証明している。ローマ帝国や中国の宮廷の主たちは、それがもっとも着心地がよく、ナチュラルだったからこそ愛用したのだ。衣服のナチュラルさは、もっとも裸に近く動きやすいことを意味する。
これに対して、科学繊維素材は、それ自体に目的があったわけではなく、天然素材の希少性により、無理やり作られたものである。
化学繊維は、着心地より機能性とシルエットの追求、安価という3つの要素を優先させている。
デザイナースーツは、このうちシルエットを最優先させる。デザインしやすいためである。
日本人は、衣服素材に対してあまりに無頓着すぎる。人はスーツを着ているわけではなく素材を身にまとっていることを知るべきである。
ウール、シルク、コットン、革の知識を我々はより深く知るべきである。知っていれば、クラシックなスーツスタイルを、もっと楽に選ぶことができる。クラシックなスーツは決して、窮屈で、かしこまった衣服ではない。もともとはリラックスを目的にした、ラウンジ(ゆったり過ごす)スーツなのである。
ゆったりすごせるからこそ、ビジネススーツに昇格したのだ。
仕立ての良さ
スーツの後姿を見れば仕立ての良さが分かる。うしろ姿の美とは、例えばオーケストラの指揮者がタクトを振っているとき細かなシワが無数に背中を複雑にはい回り、タクトを下ろした瞬間、その無数のシワが嘘のように一斉に消滅することである。プレタポルテ(高級既製服)ではこうはいかず、どこかに不自然なシワが残る。つまりうしろ姿のほうが仕立ての良さを把握しやすいのである。
ジェッティッド・ポケット
両玉ブチのポケットのこと。ダブル パイピングポケットともいう。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P198)
シェトランド・ツイード(Shetland tweed)
スコットランドのシェトランド群島に棲む羊は、岩磯で海藻を食べて育つため極めてソフトな羊毛が採れる。この羊毛で作られたツイードはソフトで、コート,ジャケットに最適とされる。実際には類似品がこの名で呼ばれることも多い。
シェットランド・ツイード(shetland tweed)
スコットランド北端にシェットランド島という小さな島があります。ピートと苔に覆われた絶海の孤島で、ここに棲む羊は、岩磯で海藻を食べて生育するため、極めてソフトでスポンジ―な羊毛が採れます。この毛を使って織られたツイードが「シェットランド・ツイード」ですが、このハンドリングを似せて作ったイミテーションが多いようです。
シェパーズ・プレイド(Shepherd’s plaid)
小弁慶。ふつう、白と黒のおなじ巾のたて、よこ縞または濃淡の弁慶縞、碁盤じま。スコットランドの洋牧者が着用したことからこの名があるといわれる。次のものが同じ系統である。シーフォース、ベイリー、グラッドストーン。
シェパード・チェック
小柄のチェックで、日本では「小弁慶」といわれるもの。たてとよこが普通の場合は同じ幅になる。シェパードは「羊飼い」のことで、もともとは羊飼い用の白黒基盤縞の布地模様を意味していた。また、白黒以外に色を多く使ったものもはファンシー・シェパード・チェックの名称で呼ばれる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P198)
シェファード・チェック
白黒または濃淡同じ幅の小さな弁慶格子のこと。スコットランドの牧羊者(シェファード)が着ていたことからこの名があります。千鳥格子(ハウンドトゥース)と違って「牙」のないのが特徴。
地襟(じえり)
テーラード・カラーなどの裏襟のこと。襟の形を作る土台になるため、バイアス地に裁断され、芯を入れてくせ出しをして形を作る。
シズレ・ヴェルヴェット
シズレはフランス語で「刻んだ」「彫った」という意味。つまりは紋様をあらわしたヴェルヴェット、いわゆる「紋ビロード」の典型がこれである。多くはサテン地に紋様を現したビロードとなっており、流行素材として登場したのは1876年のこととされている。
シェルボタン
貝で作られたボタンのこと。メキシコアワビ貝、黒蝶貝、高瀬貝などが使われる。ホワイト、ピンク、ブルーなど自然の色と光沢を生かしている。貝ボタン。
シーチング(sheeting) / シージング
本来はシーツ用の生地という意味でこの名がある。現在は立体裁断などに用いられる粗末なさらし綿布のことをさし、これでごくカジュアルなシャツ、パンツなどが作られる。また、立体裁断で、実際の作業にかかる前に型紙どおりのものを、これで作ることもいう。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P199)
シニアのカジュアルスタイル
一律のスーツスタイルと違って、シニアのカジュアルスタイルは、年齢差が表に出やすい。お洒落のポイントは、まず年齢を感じさせないことである。 高齢になるにしたがい、衣服を重ねる傾向が強くなる。だが重ねるほどに、また重ねた様子が外部にさらされるほど、年齢は現れやすい。できるだけインナー(下に見につけるもの)を隠す工夫をし、全体をシンプルにまとめあげる。
シーム(Seam)
縫い目のこと。縫い目に沿ってかけられたステッチをシームステッチと言う。縫い際。つなぎ目。合わせ目。
ジャカード(Jacquard)
ジャカード織機で織った紋織物。この織機の考案者であるフランス人,ジョセフ・マリー・ジャカール氏の名前に由来する。普通のの毛織物機は構造上綜絖の枚数に制限があり、あまり複雑な織柄ができないのに対して、ジャカード織機は相当複雑な紋柄まで織ることができる点が特徴。
ジャカード織り
リヨン(仏)生まれのヨセフ・ジャカードが、1810年に考案した機械(ジャカード織機)による紋織りだ。それまで人が織機の上に乗り、動かしていた経糸の限られた上下運動を自由に開放し、複雑な紋や模様を編み出す。どんな模様でも織り柄として表すことが可能です。
ジャカードタイ
ジャカードは元々フランスのヨセフ・ジャカール氏が発明した織機による紋織物のことをいう。日本でフランス語を英語読みにしてジャカードと呼ばれるようになった。ジャカードタイはプリントタイと比較してボリュームがあり、柄が織物として入っているので、ゴージャスな雰囲気を醸し出す。どちらかというと落ち着いた大人っぽい雰囲気なので柄もシックなものが多い。締めたときの安定感も魅力のひとつ。
シャギー(Shaggy)
ラフで毛足の長い毛羽で覆われた厚手の織物。モヘアなど粗い原料のループ糸を織り込み、これを起毛して毛羽立たせたもの。
シャークスキン(Shark skin)
文字どおり、鮫の皮のように斜めに細かいジグザグの入った柄。濃淡もしくは違う色の糸を、経緯ともに一本交互に配列して綾織り、段階状の柄としたもの。
シャークレープ
100番双糸ウールに光沢とハリに富むモヘア、天然繊維中最細で強度のあるシルク、吸湿・放温性が高いポリエステルによる四者混素材。通常ウールの約7倍もの通気性が実現されている。
ジャケット(Jacket)
一般に上着を意味する。特に背広型のそれをいうことが多い。ウエスト・レングスのジャンパーから、スリー・クォーター・レングスのコートまでジャケットと呼ばれることもある。
ジャケットの軽さ
軽さはジャケット自体の軽さではない。肩にうまくのっていれば、ジャケットは軽く感じられる。肩を支点に重量が分散されるからだ。
逆にジャケットが軽くても、肩にのらないジャケットは重く感じる。スーツは体全体ではなく、肩で着るものなのである。
ジャケットのはじまり
その昔、ヨーロッパで農夫達が短い上衣を着て野良仕事をしていた。それがジャケットのはじまり。その語源はフランス語の「ジャーク(jaque)」、つまり中世の農夫のあだ名で、彼らが短い胴衣を着ていたところから、英語でjackとなり、服飾用語で短い上衣のことをjacketと呼ぶようになった。
ジャケット各パーツ名称
上襟(うわえり)
前身頃の折り返し襟の部分の上側に付けられるのが上襟である。襟の部分は仕立てあがった状態では、全体が一つの美しい形を作るが、パーツとしては2つの布の組み合わせとなる。襟側の処理は重要なポイントである。
前身頃(まえみごろ)
ジャケットの前面、両肩から左右の胸、腰にかけての部分が前身頃。左右対称の2枚からなり、首の周りには上襟が付けられる。腰の位置に左右の腰ポケット、左前身頃の胸には胸ポケットが付き、ジャケットの最も基本となるパーツである。
後ろ身頃(うしろみごろ)
背の部分を覆う左右2枚の布が後ろ身頃。2枚の縫い合わせ線が中心線となる。前身頃、細腹、後ろ身頃で、肩の袖の付け根部分を丸く囲む穴がアームホールとなるが、その形状は着心地を左右し、極めて重要である。
腰ポケット口布(くちぬの)
口布は切りポケットを付くときに使われる布で、ポケットの切りこみ部分を表地できれいに処理するためのもの。ポケット部分は表地以外にも、裏フラップ、ポケットが開いた時に見える向こう布、袋布、隠しポケットなど細かなパーツが多い。
腰ポケットフラップ
左右の前身頃に付けられる腰ポケットは、切り込みを入れた後、裏地の付いたフラップ(雨蓋)が付けられる。切り込みの周辺は普通玉縁処理が施され、このあたりも職人の腕の見せどころである。
細腹(さいばら)
前身頃と後ろ身頃の間の脇部分に付けられる細い布。左右2枚。細腹または脇と呼ばれる。前身頃と細腹が一体になったものがあるが、普通は独立したひとつのパーツである。ウエストのシェイプはこれで決まる。
下袖(したそで)
袖の部分は下側と上側の2枚の布で筒状に作られるが、その下側を下袖、または内袖という。脇の形、肩のラインによく馴染むように、アイロンがけで微妙な立体感を出し、身頃に縫いつける。
見返し(みかえし)
前身頃を開いた裏側に付けられる表地。左右2枚。折り返し襟の下襟の部分も含まれ、前身頃と拝み合わせに縫い付けられる。いわゆるお台場仕上げでは、この部分を広くとる必要が出てくる。
胸ポケット
左の前身頃の胸の位置には、通常切り込み型の胸ポケットが付く。船底型の微妙に湾曲したその形に、仕立て職人の技術が出るといわれる。よく見れば単なる長方形ではないことに気付くはずです。
山袖(やまそで)
袖の部分の上側に布は、山袖、または外袖と呼ばれる。肩の丸みをつくる部分であり、この形状は重要。袖の縫製はアイロンワーク、いせ込みの技術などが要求されるので、分業の場合には特に熟練の職人の仕事になる。
シャツ選び
もっとも上質なコットンは、南北カロライナ産、ジョージア州沿岸諸島のシーアイランドコットンで、目が詰まり、上品な艶と光沢がある。目が詰まっているという意味は、細い糸を大量に使用しているということである。
番数の数字が高ければ高いほど価格も釣り上がり、コットンは上質になる。それだけ覚えておけば十分である。
番数は、同じ面積の中に、どれほど糸が用いられているかが目安で、高い数字になるほど人の体をしなやかに巻き込み、それが着心地のよさにつながる。
もし、シャツ屋の講釈を聞きたければ、シャツ屋のいう最高番数より、1~2段低い番数(最高番数より安価である)を選ぶ。そのくらいのレベルであれば、着心地は最高のものとたいして変わりはない。
シャツを購入する時は、まず素材を確かめる。ほどよい番数を。スタイルはその後の選択である。
(1)素材→(2)サイズ→(3)スタイル(デザイン性)→(4)ディテールの順で。消去法で選べばシャツ選びはそんなに難しくない。
シャツの馴染ませ方
シャツは、袖を通す前に、糊無し指定でクリーニングに出す。仕上がったシャツを、着物同様一晩身につけて寝る。肌に馴染ませるための効果的な方法だ。パジャマ代わりにする理由は、起きている時の動きと、眠っている時の人の動きが異なるためだ。天然素材を、できるだけ体にまとわりつかせ、体の動きを覚えさせるのだ。
朝、シャツのシワを確認することも大切である。良質のシャツは、体の線に沿い曲線のシワが走る。よい縫製の証拠である。悪い縫製のシャツは、シワが直線的に出る。前者は体の丸い部分の縫製にハンドワークを採用している証拠で、後者は大半がアッセンブリーラインにかけられた直線的仕上げである。
身につけるアイテムは、すべからく人間と二人三脚で、人の体にまとわりつき、初めて呼吸を始める。素材を蘇らせることが大切なのだ。
日本人の肌に合うシャツの色
西洋人と日本人が並んで写真を撮ると、西洋人の肌色はピンクがかり、日本人は黄色味がかる。黄色に白より、黄色にブルーの方が、引き締まって見える。肌と衣服の色合わせは大切なことで、西洋のダンディたちは、自分の肌の色と髪の毛をデリケートに分析し、その分析したカラーに合わせて、さらにデリケートな色合いを衣服に求める。
シャツについて(1)
上質のシャツはまず例外なく一本の針で丁寧に仕立てられる。「シングル・ニードル・ステッチング」と言うのだが、一本の針で縫い、縫い代を挟んでもう一度同じようにステッチが掛けられる。二本の針で一度に縫い上げるほうが簡単で安上がりなのだが、これだと洗濯によって皺になる危険性がある。
「シングル・ニードル・ステッチング」以外に、入念なシャツを見分ける箇所は以下のふたつ。ひとつはカフスから袖につながる位置のプリーツ(襞)で、このプリーツが多ければ多いほど仕立に手がこんでいる証拠であり、袖のラインも優雅に表現される。もうひとつはガントレットボタンの有無。ガントレットボタンとは袖口の開きに位置するももうひとつのボタンのことで、上質のシャツには必ずこれがつけられる。このボタンはかつて軽く袖口を折り返す時、カフスボタンのボタンホールに留めるためのものであったが、今では凝ったシャツの目印とされる。
あと、背のヨーク中央部の縦の縫い目も由緒正しきシャツの証明になる。
シャツについて(2)
クラシックなスタイルにコーディネイトさせるべきシャツは、衿に何も付いてない、ごく普通のスタイルである。ネクタイを結ぶ逆Vの部分は、120度から130度開いてなければならない。衿の長さは7センチが基本である。
カラー(後ろ衿)の高さは4.5センチ。スーツの後ろ衿から、1,5センチほどシャツカラーを覗かせる。クラシックスーツの後ろ衿の内側は3センチ(外側は4センチ)なので、シャツカラーが4.5センチであれば、1,5センチ覗く計算になる。5センチのハイカラーは、首の短い日本人には似合わない。
シャツについて(3)
シャツが、フォーマルとアンダーウェアの二面性を具えていることは、最高の素材が上質のコットンであることからも推量できる。コットンは通気性にすぐれ、肌へのなじみは他の素材を超越している。ヨーロッパでは、上質のコットンはシルクよりも高価である。肌に近いものほど良質な素材を選択することが粋ではよくいわれることだ。
シャツについて(4)
正統派なシャツは変ることなく「ホワイト・シャツ」である。「白い襟」のシャツを着ている限り、ホワイトカラーの立場は保証される。されに理想的な襟型はドレッシィな折襟か、「カッタウェイ」。カッタウェイとはスプレッドカラーとも呼ばれる左右に大きく開いた襟型である。袖は絶対長袖に限る。シティのオフィスにあっては、暑い日に袖まくりすることは許されても、半袖シャツを着ることはいただけない。
シャツについて(5)
シャツはもともとアンダーウェアだった。ラテン語の、tunica(下着)が語源である。
下着は、もっとも肌に近い皮膚感覚の衣服であり、ヨーロッパのダンディたちの多くが、アンダーウェア無しでシャツを着ることを考えれば、シャツ素材はできるだけ吸湿性の高いもの、つまりコットンが最良である。
肌に近い衣服ほど、上質素材を使うべし、これも着こなしの基本である。
シャツについて(6)
衿腰の高いシャツと衿腰の低いシャツとでは、ジャストサイズが異なってくる、これは大切である。
大きめの首回りにきつくタイを締めれば、タイスペース(衿が開く逆V字の部分)にずれが出て、緩めれば喉元に隙間ができる。
シャツの首回りに、不必要な余裕を持たせてはならない。ジャストサイズが基本である。ジャストサイズとは、首が自由自在に動き、かつ首がシャツの中で遊ばない程度のサイズを意味する。
オーバーサイズは、ジャケットの下に溜まりやすく、ジャケットのどこかを引っ張る。不自然なシワも出る。
シャツについて(7)
クラシックなスタイルは、スーツの後ろ衿と袖口から、バランスよく、シャツがそれぞれ1,5センチほど覗かなければならない。スーツの襟元と、袖先からシャツが見えることにより全体が引き締まるのだ。襟元と、袖先からシャツが覗かないと、スーツがオーバーサイズに見え、さらに全体のメリハリ感がなくなる。
ダークスーツと白いシャツを身につけ、スーツの袖口からシャツを覗かせた場合、覗かせない場合をモノクロ写真で検証すればすぐに分かる。シャツが覗いてないスタイルは、間違いなく間が抜けて見える。
シャツについて(8)(袖先のプリーツ)
上質でエレガントなシャツの袖には、必ず何本かのプリーツが走っている。ただし、そのプリーツは完全に折りたたまれていなければならない。なぜなら、後から縫いつけて、プリーツ風に処理をしたまがいものが多いからである。
プリーツは、袖の生地の溜りを美しく見せてくれる。長めの袖が、ボタンやカフスボタンにより、袖先にきっちり留められたとき、プリーツがほどこされた部分が盛り上がり、袖に美しい立体感を醸しだす。中世の衣服そのままのデザインである。
シャツについて(9)
シャツは、人肌とジャケットを中和させる。体が動き、ジャケットが動き、2つの動きにしたがって、シャツが素早く動かなければならない。ジャケットの下、肌の上という独特のポジションで、ジャケットに厳しく語りかけ、肌に優しく語りかける。両者の間に割って入り、摩擦を食い止め、円滑な流れを作る。それが、シャツの本来の役割である。役割を果たすためには、シャツは限りなく柔らかくなければならず、柔らかく動くシャツの条件は良質なコットン素材である。
シャツ姿は非礼
シャツの語源はラテン語のtunica(下着)である。事実、18世紀末までのシャツは、下着を兼ね、ジャケットを羽織った時、見える部分は取り外しの利く襟だけだった。西洋人がシャツを、意までも下着感覚で身につけるのはそのため。彼らにとって、シャツは、ジャケットのインナーでもあり、下着でもある。その感覚が残っているために、公衆の前のシャツ姿は非礼とされる
シャツとネクタイ素材の関係
半世紀ほど前のタイ素材の大半は、スーツ同様地が厚く、現在のタイ素材のような繊細さは持ち合わせていなかった。ボタンやピンでカラーを固定してしまった裏には、シャツのカラーの下に、ネクタイがおさまりにくかったという事情もある。シャツの衿の、浮きを防ぐためだ。
現在のタイは、カシミアのような素材を除けば、大半が繊細な素材である。繊細な素材であれば、シンプルで繊細なイングリッシュ・スプレッド・カラーがよく似合う。
シャツの袖丈
シャツの袖丈は、手首の骨がポコンと出たところまでの長さプラス 5センチぐらい。腕を曲げた時の余裕などを考えると、最低5センチは必要である。
シャツ(余談)
007でショーン・コネリーが身につけた、ターンブル・アッサーのシャツのダブルカフスの袖先の長い辺は9センチ、短い辺は7センチで、7センチから9センチにかけて緩やかにカーブする。2センチの間のこのカーブは上品で、最たるクラシックを表現する。
英国やイタリアの正統を受け継ぐ現代のクラシックシャツも、同様のカーブを描いている。
シャツ用語
アイリッシュリネン
上質な亜麻(リネン)の織物。平織りが多いが、ドビー、ジャカードの変化があるものもある。
インド綿
インド産の綿の総称。米綿よりは、品質が劣り、繊維は太くて短い。
ヴィエラ
毛、綿各50%の混紡糸で斜文織にした、軽いフランネル風織物でウィリアム社の商標名。柔かな感触と暖かい風合いが特徴。
エジプト綿
エジプトのナイル河流域で生産される長毛の綿のこと。強くて絹のような艶がある。
エンドオンエンド
刷毛目とも呼ばれる。縦横ともとも白糸と色糸を交互に配列して織ったパターン。目立たず着やすい。
オックスフォードクロス
斜子織りにした綿織物で、柔らかい平滑な感触と美しい光沢があり、ふっくらした風合いがある。組織の関係から通気性に富み、シワも寄りにくい。
オープンカラー
第1ボタンが付いていない、開襟になっている襟型。
ガセット
シャツの前身頃と後ろ身頃を合わせた両脇の裾に付いている補強の三角の布のこと。
カフ
袖先を留める機能と汚れを防ぐ機能を兼備した装飾的部分。シングルカフとフレンチカフ、コンバーチブルカフがある。
カラー(襟)
シャツのフィッティングで需要なのはネックサイズ。首周りの標準はヌード寸プラス1.5cm。
カラーバンド
襟を立たせるために用いられる、土台となる箇所。ネクタイのノットを収めるタイスペースを作るための箇所でもある。最近(2002)ではイタリア製のシャツを中心に襟腰が高くなっており、クラシックな雰囲気が再び脚光を浴びつつある。(一般的に襟腰が低いシャツはモード系、高いのがクラシック系)
ガントレットボタン
剣ボロに付けるボタン。通常、カフボタンよりもひと回り小さいものが使われる。
グラフチェック
方眼紙のようなチェックが一定感覚で入ったパターンのこと。
剣ボロ
袖口の開き部分のこと。元々、シャツの着脱を容易にするために生まれたものだが、カフをプレスする時にも役立つ。短冊あきで、開きどまりを三角形にしたものをいう。
コンバーチブルカフ
シングルカフの一種でボタンでもカフリンクスでも留められるオールラウンドタイプ。シングルカフとダブルカフスの中間といえる。
コンチネンタルカラー
身頃から一体型の襟。1930年代中頃にイタリアで流行し始めたリゾートシャツの襟型。ワンピースカラーともいう。
シングルカフ
折り返しのない一重。円筒形で樽に似ていることからバレルカフとも呼ばれる。通常のシャツはほぼこのカフ仕様になっている。ダブルカフスに対しての言葉。端の処理が直角になているスクエアカフが最も一般的。
スクエアボトム
丸みを付けずに直線にカットされた裾のこと。上前と下前の見頃同士、ともに水平になるのが特徴。
スタンドカラー
折り返しがなく文字通り真っ直ぐに立っているカラー。ネクタイを締めない時にコーディネイトしやすい。立ち襟の総称で、外側に折れないで首に沿った襟型。
スラッシュト スリーブ
切り込みの入った袖のことで、袖部分に切り込み装飾の入ったスパニッシュスリーブ風の袖をいう場合と、袖口にスリットの入った袖をさして使う場合がある。
セパレートカラー
カラー部分が台襟から取り外せるように作られている襟。19~20世紀初頭まではほとんどがこのタイプだった。縫い付けられている一般のシャツ襟は、アタッチドカラーという。
セミワイドスプレッドカラー
およそ80~100度の開き角度を持っている襟型。ナロウプスレッドカラーとワイドスプレッドカラーの中間ぐらい。
センターボックスプリーツ
背中にある折り目が裏で突き合わせになった、箱のようなプリーツ。背中から肩の運動量が増え、立体感を出す。
タッタソール
白地に2色のチェックが交互に入る。ロンドンの有名な馬市場を創設したリチャード・タッタソール氏に由来。
スモールカラー
襟が6cm以下と短く、やや台襟が高く、開いた襟のこと。ゲーブルカラー、ショートポイントカラーともいう。
タブカラー
襟裏に小さなタブが付いているカラー。両襟を引き合わせることでネクタイを立体的に見せ、首元をすっきりさせるためのデザイン。ドレスシャツの襟型のひとつで、襟に小さな持ち出しが付き、それをネクタイの結び目の下でスナップなどで留め合わせるようにしたもの。
ダブルカフス
袖口を2重に折り返したタイプでフレンチカフとも呼ぶ。カフリンクスを前提としたドレッシーさが魅力。フォーマルシーンに似合う。袖口が折り返って2重になったものをいい、拝み合わせにして、四つのボタンホールを一つのカフリンクスを用いて留めるデザインが特徴。
ダブルカラー
折り襟で、二枚の襟が重なったもの、またその状態をいう。非常にデザイン性の高い襟で、素材や色を変えて重ねることもある。取り外しできる襟のこともいう。
ターンナップカフ
袖先を肘側へ折り返したカフスの総称。ダブルカフスのように見えながら、シングルカフなのでカフリンクスの必要がない。ターンオーバーカフともいう。
テールドボトム
シャツの尾、つまり後ろの裾のことで、丸みを帯びたラインになっている。ラウンドボトムなどという言い方もある。
ナロウスプレッドカラー
開きの狭い襟の総称。その角度がおよそ30~80度のくらいのものがこれにあたり、英国風のシャツに多い襟型とされる。
パネルフロント
前立てが表側にあらわれた一般的なもの。プラケットフロント、ブリティッシュフロントともいう。
バレルカフ
折り返しのない1枚仕立てのカフで、角をカットした形が特徴。
ピンホールカラー
剣先の中央部分に小穴が開けられ、襟の前端に金属性のカラーピンを渡して留められるようになっている襟。ピンはネクタイを結んだ下側に通し、左右の襟をきっちりホールドする役割と装飾性を兼ねている。アイレットカラーともいう。
プラケット
シャツの袖口や襟元などに作られる開きのこと。
プルオーバーシャツ
頭からかぶって着る形式のシャツの総称。ポロシャツとかはこのタイプです。ボタンは三つほどついています。
フレンチフロント
前合わせの位置に前立てを付けないプレーンなものをいう。裏前立てともいう。
フロント
シャツの前合わせ。レギュラー、前立てのあるプラケット、前立てを2重にしてボタンを見えなくしたフライがある。
フロントスティッフ
スティッフは「堅い」という意味で糊をきかせて堅くした、ドレスシャツの胸部、堅胸のことをいう。別名、いか胸、ディッキー、ブザムとも。
ポイント(剣先)
襟の先端のこと。ピントの長さはスーツのラペル幅やネクタイ幅と同じように時代の流行によって変化する。最近の傾向としてはシャツのポイントはやや長めでスーツにポイントが隠れるくらいのデザインがちょうどよい。Vゾーンの中でポイントが見えてしまうのは今では少々野暮ったい(2002現在)
ポケット
通常、フォーマル色の強いシャツにはポケットはつかない。シャツのポケットはシャツ姿になった時に何か小さなものを入れる程度で実際に使用することはそれほどない。オーダーシャツではポケットなしにして胸元をすっきりさせる人も多い。
ボタンダウンカラー
剣先にボタン穴を設け、身頃に付けたボタンで留めるようにした襟型。トラッドの定番アイテムとして、またスポーティーなシャツとして定着している。
ボタンナップカラー
剣先がタブ式になっていてスナップボタン留めをする襟型。また、襟先同士が前中央で重なり、ボタン留めする襟を指すこともある。
ラウンドカラー
剣先を丸くしたカラー。クレリックシャツなどエレガントなシャツに用いられることが多い。非ビジネス色が強調されるカラー。
ラウンドカラー
剣先が丸みを帯びた襟の総称。カットの大きさによって、大丸、小丸と区別されている。ミラノカフともいう。
リンクカフ
カフリンクスを使用して留め合わせるカフのこと。普通のボタン留め式の既製シャツにも、シングルカフの両方にボタン穴が切ってあるタイプはこのようにカフリンクスが使える。
レギュラーカラー
ごく一般的なシャツ襟をいい、剣先までの長さが6.5~7.5cm前後、襟開き角度75~90度くらいのものを指す。
ロングポイントカラー
長い剣先の襟型の総称。だいたい10cm前後以上の長さのものをいい、襟開きの角度は鋭角的で狭く、襟腰も高くなるのが特徴。
ワイドスプレッドカラー
開きが特に広い襟型。一般には100~140度の開き角度を持つものをいい、伝統的にフランス風スタイルとされる。英国のウィンザー公によって愛用されたことから、ウィンザーカラーとも。ウィンザーノットのような大きなノットを合わせるのが主流。
ワンナップカラー
台襟の付いていない一枚襟。普通は第2ボタンのところから身頃を折り返し、開襟シャツのようにして着るが、襟下の第1ボタンがループで留める形になっているので、首元から留めることもできるツーウェイカラーであるのが特徴。
シャツ素材
コットンダック
キャンバスに似た厚手で丈夫な帆布用の綿織物。本来は亜麻または大麻で作られていた。
コットンツイル
斜めの畝があらわれて見える綾織の木綿地。
コットンピケ
タテヨコ2種類組織で、盛り上がった畝(うね)をあらわした綿織物。畝の立体感とコシ強さが特徴。
コットンボイル
薄地で軽く透けた感じの、密度の粗い綿織物。
シーアイランドコットン
西インド諸島バルバドス、ジャマイカなど、現在世界で5地域のみで産出される綿のこと。非常に細かくて毛筋が長く、絹状の光沢が特徴。優れた吸湿性も備え、綿の最高級品種と言われている。海島綿ともいう。
シャーティング
シャツ用素材の総称で、織り組織や色柄の限定はないが、一般的に密な組織の薄地のものをいう。金巾(かなきん)ともいう。
シャンブレー
タテ糸に色糸、ヨコ糸に白糸を使って、平織りにし、霜降り効果を出した無地調の先染織物のこと。ソフトで上品な風合いが特徴。
シルク
蚕の繭から得られる繊維の女王、絹。しなやかで手触りがよく、優雅な光沢を持つ。
スーピマコットン
アメリカ南西部のアリゾナ州などで栽培される超長綿、ピマ綿の米国スーピマ協会の商標。ピマ綿の中でも良質なものを指す。
ダンガリー
デニムとは反対に、タテ糸にさらし糸、ヨコ糸に色糸を用いた斜文織り。デニムより薄手。
天竺
金巾(かなきん=シャーティング)よりやや厚めの、綿の平織物。むかし天竺(インド)から輸入したところからの名。
ドビークロス
ドビー柄という比較的小柄で規則正しい幾何学的な模様 = ドビー柄で織られた生地。
ピマコットン
アメリカの高地で栽培されている綿。ソフトでしなやかな風合いと、美しい光沢を持つ。
ブロードクロス
布面に繊細なヨコ畝をあらわした平織物の綿織物。シルケット加工を施してあり、手触りが柔らかく光沢がある。織りが密であるのも特徴。
ポプリン
ヨコ糸の方向に細い畝が走っている、手触りの柔らかい布地のこと。平織りにするので布面にヨコ畝があらわれる。シルケット加工を施し、美しい光沢をもたせたものもある。
ホワイト オン ホワイト
白地に複雑な白のドビー柄を織り出した布のこと。
ロイヤルオックスフォード
比較的厚地の、柔らかくて光沢のある斜子織りの綿織物。英国王室オフィシャル素材といわれている。
ロンドンストライプ
地とストライプが等間隔で入る。英国ではブロックスストライプと呼ばれる。幅は太くて約1cmから約5mm。
シャツ柄
インディアマドラス
インド、マドラス地方の民族的な独特の色柄を持った格子柄やタテ縞で、野趣のある綿織物のこと。
オルタネイトストライプ
2種の異なった、タテ縞が交互に組み合わされた縞柄のこと。毛織物の柄としても広く使われる。
キャンディストライプ
スティックキャンディのような細い棒柄。白地に赤や黄などの甘く明るい色づかいのストライプを特にこう呼ぶ。
ギンガムチェック
2色以上のタテ縞とヨコ縞を使った、格子柄。普通は色糸とさらし糸を用いた格子柄が多く、軽快で若々しさが感じられる。
グラフチェック
グラフ用紙、つまり方眼用紙を思わせる細いラインの、小さな格子のこと。
グレンチェック
千鳥格子とヘアラインストライプを組み合わせら柄のこと。グレナカートチェックの略語。
ダイヤゴナルチェック
「斜めの」「対角線の」の意味で、右上から左下へ、45度の斜め柄のこと。
タッタソールチェック
明るい地色に2色の比較的細めの格子が重なった2重格子。もともとはロンドンの馬市場の名で、その創設者、リチャード・タッタソールにちなんだもの。
ダブルストライプ
同じタテ縞の筋が2本ずつグループになって配列された縞柄のこと。
ヘアラインストライプ
非常に細い縞が接近して配列されている縞。
ペンシルストライプ
細い線が5~10mmくらいの間隔でならんでいる縞で、鉛筆で描いた線のような感じの縞。薄手の毛織物に多く用いられ、紺などの無地に細い線の白い縞が代表的である。
ボールドストライプ
輪郭のハッキリした肉太で色鮮やかなストライプ。幅は約1.5cmから3cmくらいまで。
マドラス
草木染めによって色がにじむ効果が出た、多色づかいの格子や縞柄のこと。
ロンドンストライプ
幅が5mmくらいの細い縞を等間隔に配列した単純な棒縞。一般的に白地に1色づかいか、2色づかいのものも見られる。
シャツブランド
バルバ
着たときにアームホールが高く身体にフィットする独特の着心地。そしてスタイルはバルバ特有のもので、クラシックの本流とモダニティーの融合を見事に成し遂げている。袖付けは、非常に細かいピッチで立体的に付けられる。ボタンは、ボタンが落ち難い機能的役割がある鳥足状のボタン掛け。
キトン
自社工場にて製作されるキトンのシャツは完全なるフルハンドメイド。「着心地のよさ」ということにストイックなまでにコダワッタ各所ディテール処理は一見の価値あり。ボタンは漂白処理せず、ナチュラルな貝の色味が生きたものを採用。脇線などの直線部分でさえ丁寧な手縫い処理が施されている。
フライ
素材使いに定評のあるボローニャの名門。カルロ・リーバなどの高級素材のみを使用。シャツの生命線とも言えるカッティングは全て手作業で行われ、袖付けなどの縫製にはアルチザンの技を存分に見せつけている。裾には裾からのほつれそ防ぐガゼット(力布)が付けられている。ギャザーを寄せた袖山の処理は肩にエレガントな立体感をもたせる。
ルイジ・ボレッリ
随処にハンドを用い、ナポリハンドメイドシャツを世に知らしめた先駆ブランド。クラシックなクオリティを継承しながら、“今”の時流をおさえたデザインには定評がある。
第4ボタン脇のカンヌキは前立てが開かないように留めてある。襟が首に沿ってフィットするよう台襟部分は手かがりでまつられる。
フランコ・プリンツィバァリー
言わずと知れたサルト会の重鎮フランコ・プリンツィバァリー氏がプロデュースするプレタライン。このシャツを手に取れば価格以上のクオリティが必ずや実感できるはす。身体の動きにゆとりをもたせるために最下段のボタン穴は横切り。襟、袖口に施されたハンドステッチはアイキャッチとして効果大。
ペガソ
高い品質、およびブランドイメージを、少数販売により保守してきたイタリア・フライ社に、同品質で別のモデルを発注。生まれたのが“ペガソ”ネームのシャツ。細かなピッチで正確にミシンで縫い上げられている。身頃の余分な生地量を背中のダーツで減らし着用地のもたつきを解消している。
ギ・ローバー
イタリアのデザイナーズブランドのシャツファクトリーとして有名。丸く立体的なボディーや襟ぐりの作りに特徴があり、北イタリア特有の堅実な作りが、ミラノの洋服好きの人々に深く信頼されている。
アンナ マトッツォ
オーナーを含めスタッフすべてが女性というナポリのカミッチェリア。ジャケットの中でもたつかない細身のパターンは、決して窮屈な着心地ではなく、身体の線に沿ったエレガントなラインを構築。ジャケットを脱いだ様も上質感に満ちている。
前ヨーク部分には素朴な味わいのハンドステッチが施されている。手縫いのボタンホールは機械縫いではフ可能な縫い目の柔軟さが特徴。
ルチアーノ バルベラ
原料の繊度、糸番手と織り組織完全なバランスにより生まれる最高品質の素材のみを使い仕立てられるルチアーノ バルベラのシャツ。随処に見せる手の込んだ作りが高品質の証。胸ポケット、剣ボロ、前合わせなどで綿密に柄合わせが行われている。前方部分のプリーツにより上腕部の動きに対応するゆとりが生まれる。
アクアスキュータム
伝統を受け継ぎながらも常に革新的な精神を忘れず、同じに品質のよさと時間を超えたエレガンスとの調和にこだわり続けている英国の名門。贅沢な素材使いが特徴である。例えば、南米ペルーピマ綿を使用し、縦横共に103番双糸で織り上げたジャカード地。シルキーでソフトな風合い、そして吸湿性の高さが特長。
オリアーリ
フィレンツェ郊外にハンドメイドシャツ専門店のファクトリーとして設立されたレベルグループSRL社のオリジナルブランド。ハンドを多用しながら2万円以下の価格設定が驚異。
ジョン・スメドレー
海島綿ポロの元祖的存在で英国が誇る名門メーカー。1784年創業のジョン・スメドレー社。染料の違いが糸の張り具合に影響するため、色ごとに分けて編み、袖付け、首回り処理は手作業、といった徹底した生産体制が名品を生む理由。
エルメス
ギリシャ神話の「工匠」の神「ヘルメス」から名を取りブランド名にしたエルメスは、クラシックをベースにしたフランス特有のエレガンスに富んだ柄・色のシャツを多く発表している。
シャドー柄
撚り方向の違う糸―順撚り糸と逆撚り糸を組み合わせて使い、光線の反射の違いを利用して柄を作ることができます。光線の具合で柄が見え隠れする、これがシャドー柄です。
シャドーストライプ
撚糸の方向を変えることによって、縞柄が形成されたもの。一見無地に見えるが、光線の具合で縞が浮き上がって見えるのが特徴である。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P200)
シャリ味(み)
強撚糸を使ったものや、粗い英国種羊毛、モヘヤ糸を使ったものなど、意図的に爽やかさを出した場合のシャリシャリした手触りを「シャリ味」といって、夏物では、むしろよい風合として評価されます。「がさつき」とは違って、軽快で通風性に富み、サラッとした心地よい肌触りといえます。
シャルベ
パリのウァンドーム広場にある老舗中の老舗。イタリアとはひと味違った美しい色彩と、クラシックな柄が特徴。20世紀初頭のベルエポックの時代に、既に現在に残るエレガントな数々のパターンをデザインし、ネクタイブランドとして世界に名を馳せた。英語読みでシャーベットとなることから、一時は、アメリカで「Charvet」が、超高級品の代名詞としてもてはやされた。
シャルベ
仏・パリの、シャツおよびネクタイブランド。1838年、エドワード・シャルベが、オーダーメイド専門のワイシャツ店として創業。ド・ゴール元大統領が愛用したことで知られる。
160年の歴史を持つシャツ専門店 「シャルベ (Charvet)」
誕生当時、フランスのシャツの仕立て屋は、記事の見本を持って客の家に出向くという商売をしていた。クリストフ・シャルベは趣味の良い顧客の要求にできる限り応えようと、たくさんの生地を揃えようにした。そうなると、すべての生地見本を持って出向くのはむずかしい。そこで、客を店舗に迎えるという新商法をとった。
シャルベの試み
シャツの老舗・シャルベはさまざまな試みに取り組んできた。例えば、もともとボタンで付けた衿とカフスを、シャツ本体に縫いつけることを考案。これが、今われわれが着るシャツのスタイルを生み出した。
シャンタン(chantung)
「山東絹」のこと。紬(つむぎ)風に、ネップが浮いて出た、平織り絹地。「シルク・シャンタン」の略称。張りがあり、変わった地合いが特徴となっている。婦人服に用いられるほか、ファンシーなタキシードの生地として使われる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P200)
シャンブレー(Chambray)
平織りの一種。タテヨコに色糸を使い分け、見る角度によって、どちらかが強く見える性質を持つ生地。
獣毛と羊毛の違い
毛織物の原料として羊毛と並んで重要なものに「獣毛」があります。「ウール」呼ばれる羊の毛と「ヘヤー」と呼ばれるカシミヤ山羊の毛や、アンゴラ山羊の毛(モヘヤ)などの獣毛とは、そのセンイの組織構造が全く違います。従って商品としての価値や、製造技術も区別して扱われます。
①獣毛には、羊毛のようなクリンプがありません。従って、縮絨性、巻縮性はウールに比べると劣ります。
②獣毛はセンイの表面にあるスケールの凸凹が、羊毛に比べて平滑です。従って、手触りが滑らかで光沢に恵まれていますが、絡み合う性質に乏しく、フェルト化しにくいといえます。
③獣毛のセンイの髄が中空になっているのものがあり、これが温度の伝達を妨げます。このため、冬物としては暖かく、夏物としては涼しいという効果をもたらします。
④獣毛は羊毛に比べて吸湿スピードが速いものが多く、モヘヤなどはこの点で夏物素材として適してます。
シュートリー(ジョンストン&マフィー)
創業者は、アメリカに渡ったイギリスの職人ウィリアム・J・ダドレー。ご存知の方も多いだろうが、アメリカのよく知られた靴メーカーである。そこで商品化されただけあり、そのシュートリーは極めて機能的にできている。素材はレッド・シダー(赤杉の木)で、来るの型崩れを防ぐと同じに、吸水・防湿・防臭性にとむ。ニス塗装などの余計な加工がされていない分、早く水を吸いとってくれる。
このHP更新者もシュートリー(シューキーパー)を愛用しています。プラスチックの安価なものも販売されてますが、吸水、防湿、防臭性を考えると、やはり木製(杉)が最適です。木製となると高いものは一万円以上しますが、3000円程度でも、質のよいシュートリーが売られています。ちなみに更新者はこちらのHPで購入しました。そのHPでは紹介されてませんが、かかとがちゃんとかかとの形になっているシューキーパーも、そのHPで売られています。(問い合わせれば教えてくれます。隠れアイテムのようなもの?)それを購入しました。 値段と品質のバランスがとれているとてもいいシューキーパーです。
理想はオーダーメイドの靴を専用のシューキーパー付きで手に入れることですが、ウン十万円しますから、まだまだ我慢です。
ジョージ・ブライアン・ブランメル
通称ボー・ブランメル。平民の出ながら、1793年オックスフォードのオーリエール・カレッジに入り、時の皇太子ウェールズ公(後のジョージ四世)と出会って寵愛され、貴族並みの扱いを受ける。やがてその言動のあまりの尊大さゆえにフランスのカレーに追放される1816年までの22年間にわたり、究極のダンディズム体現者として、王室、貴族たちの間に圧倒的な影響力をもった。
「当時の上流階級のあらゆる催事においてブランメルの欠席は失敗とみなされ『ブランメルの言葉は神託、服装は客間の法則』とまであがめられ、一時代の趣味を牛耳るどいころか、後々までも尾をひく美の基準を打ちたてたほどの影響力を持った。」(中野香織「スーツの神話」より)
「仕立ての良さはテーラーの名誉、フィットの良さはテーラーの私の共同のもの、しかし着こなしの良さは私だけの名誉に帰すものだ」、「最大の恥辱は、自分の外側の身なりによって、とおりで人目に付くころである」これはブランメルの言葉。
彼の装いは、白と黒のウールと麻のみを用い、そして何よりも自らの着こなしの良さを誇った。絹やビロードなどの豪華な布地、宝石や金銀で飾り立てることは、醜く太ったジョージ四世でもできるが、着こなしの良さはだれにも真似のできない差異だと言うのである。そして、フィットの良さとシルエットの良さのために美しい身体を維持することと、人目につかぬ着こなしをすること。この二点に徹底的にこだわったと言われている。
ショートメジャーリングシステム = 短寸式
胸まわりと肩まわりは人体の中でもっとも複雑な曲線がからみあっていて、腕の動きなども考慮しなくてはならない部分です。短寸式はこの胸まわりの部分をとくに入念に採寸する方法。この採寸個所は、鎌深寸、前肩寸、越肩寸、前腋寸、の4ヵ所ですが、いずれも胸まわりの寸法採り(バスト寸)より測定距離が短いので、ショートメジャーリングシステムと呼ばれている。
乗馬服の名残
スーツの原型は乗馬服に由来するが、そのディテールの名残を今日のスーツに見ることができる。斜めに切り込まれたハッキング(スラント)ポケットと深いサイドベンツである。どちらも馬に乗った時、実用的かつ美しく見せるための仕様。
ジュストコル
ジュストコルは胴にぴったりとしたという意味で、軍隊用の外套カザックから発展した上衣である。丈が長く、前明きにボタンがつけられ、袖口が広く飾りカフスがつけられている。10世紀から18世紀の代表的な男子服。
ジョドパーズ
乗馬用のスラックスのこと。裾をジョドパーブーツの中に入れてはくタイプではなく、ももの部分で外側にふくらみ、裾にかけて細く詰まり、折り返しが付く。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P201)
ショルダーライン
コンケープド・ショルダー
コンケーブは「へこんだ、くぼんだ」の意味。首の付け根から肩先線までが弓なりに湾曲し、肩先で高く反り上がった肩線の一種。
シャツ・ショルダー
アンコンストラクテッド・ジャケットに代表されるシャツ仕立ての肩のこと。「パッドレス・ショルダー」ともいう。
スクウェア・ショルダー
全体的に角張って、肩先がやや持ち上がって、見える肩線。ナチュラルショルダーを少し直線的にしたような感じで、典型的なブリティッシュ・モデル(英国製)のスーツに見ることができる。
ドロップ・ショルダー
肩先(袖付け部分)が、通常の肩線より落ちているショルダー・ライン。
ナチュラル・ショルダー
パッドの入ってない、もしくは少ししか入っていないショルダー・ライン
ナロー・ショルダー
狭い肩線。アイビー・リーグ・モデルに見るスーツのショルダーが典型。
パデッド・ショルダー
肩パッドを厚く入れて、広く高く張らせた肩線。ビッグショルダー(80年代中頃から主流を占めるようになった大きく作られた肩線)の代表的なもの。
ブロード・ショルダー
幅の広い肩の総称。特に通常よりも4~5ミリ広くなった肩線を指し、ドレープスーツ特有のものである。ワイド・ショルダーと同義。
ショートレングス
コート・レングスが短いものをさす。普通「背丈、総丈」の場合に使い、その他の部分に使うことはない。また、生地の幅について、専門的に用いることもある。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P201)
ジョン・ロブ
英国の老舗の靴ブランド。1866年、ジョン・ロブが創業。顧客だったエルメス家に認められ、エルメス店内で、製造販売をするようになる。英国王室の靴を手がける。
ジランダー(Zelander)
イタリアのロロピアーナ社が開発した服地。伸縮性、弾力性に富み、上質の素材とされる。原料はニュージーランドメリノ種の羊。中でも特殊な管理技術によって育てられた羊毛を用いる。独特の風合いに評価が高い。
シール(Seal)
シール(アザラシ)の毛皮に似せて、粗い羽毛を一定方向に寝かせて仕上げた、毛足の長い紡毛織物。
シルヴァーノ・ラッタンジ
100パーセントハンドメイドで靴作りを試みる、イタリアでも数少ないアルティジャーノ(職人)。イタリアの優れた職人の、社会的ポジションは、アーティストに近い。メーカー名は、名前を逆読みした、ジンターラ。
シルエット
立体を平面化したところに生まれるアウトラインのこと。また、外観のスタイル・ラインを指していう場合と、影法師を意味することもある。普通、スーツ、ジャケット、スラックス、コートなどのアウトラインを総称して呼ばれる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P201)
シルエットをお洒落に見せるポイント
上着のウェストは高めで絞りめにすること(英国式)。ラペルとカラーが縫い合わさるゴージラインは適度に高い位置に。その持ち上げ効果で、首周りがたくましく見えます。肩パッドはほどほどに。肩周りのボリューム感は避けるべきです。しかし、よく言われるナチュラルショルダーもきちっと形になっているのが条件です。袖の幅は細身が良く、アームホールは狭く、高い位置が望ましい。そうすると、胸のあたりがV字型に見えます。
シルクサテン(silk satin)
絹の朱子織物。ネクタイやカマーバンド、タキシードの拝絹(はいけん)などに使われる。しなやかな手触り、優雅な光沢感、ドレープ性が特徴。
シルクハット
礼装用の帽子、円筒状のクラウンをもち、ツバが比較的せまくなっている。モーニング・コート、燕尾服など最上級の礼装に用いられる。もともとは17世紀半ばに大流行したビーバーハットに源があり、激減したビーバーの毛皮のかわりに、シルク地が使われたのが、この帽子の始まりである。オペラハットなどの種類があり、欧米ではトップハット、ハイハット、と呼ばれる他、トッパーの俗称もある。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P201)
シルクポプリン(silk poplin)
経糸に絹、緯糸に梳毛糸を使って平織にした交織り地。地合いが密で、手触りが柔らかく、光沢がある。ネクタイに多用される。
ジレ(Gilet)
胴着,ベストをさすフランス語。元は華美な装飾をほどこした袖無しの胴着を意味したが、現在はベストと同義に扱われる。
シワの回復力
羊毛センイは、徐々に引っ張ると30%も伸び、再び完全に元に戻る特殊な分子構造をしています。そのうえクリンプという波状の縮れを持っているので、強い弾力性があります。オール・ウールのズボンやスカートが、シワになっても一晩ハンガーに吊るしておけばもとに戻る、蒸気をあてればもとに戻る、という「シワの回復力」は羊毛センイの構造にその秘密があります。
ジーン(Jean)
ジーンなる語は英語であり、いわゆる綾織綿布の一種を指している。起源は中世イタリアのジェノア(イタリア北西部の湾岸都市で、正称は「ジェノヴァ」)に始まるが、その語源には二つの違った説がある。一つはこの織物の生産地、ジェノアを意味する中世英語ジーン(Gene)から来たという説と、もう一つはジェノアさんの布地を意味するフランス語、ドラ・ド・ジェーヌ(drap de Genes)から来たとする説がそれである。
その語源がいずれにあるとせよ、このジーンなる織物が欧米諸国に輸出されだしたのは、16世紀に入ってからのことだった。そして、この語jeanの英語圏における最初の使用例が見られだしたのは、「ウェブスター英語辞典」によると1577年頃からとなっている。
シワについて
霧吹きは、もっとも簡単にシワを取る。就寝前にシワのよった部分に、軽く吹きかける。スーツの背にべったりと横に走るようなシワ取りは期待できないが、細かなシワはよく取れる。噴出孔が小さければ小さいほどよい。
ホテルのバスタブに湯をため、ハンガーに吊るしておく古典的な方法は、素材を傷めるばかりか、折り目も一緒にとれてしまうので、避けたほうがよい。
ハンガースティーマーは、服を吊るしたままシワ取りができる便利なものである。シワの部分にスティーマーを当て、同一方向に軽く撫でていく。
衣替えの際の手入れを除けば、服の手入れは三つだけである。ブラッシングとしわのばし、折り目の復元である。
長持ちさせるポイントは、やたらにアイロンを当てないことである。シワをのばす作業と、折り目をつける作業は異なるのだ。それを混同して、しわがよればとにかくアイロンをという発想は、素材を傷めるだけである。通常はシワをのばすだけでよい。ブラッシングして、軽く蒸気を当てれば十分なのだ。生地自体復元力をそなえているので、余分なことはしないほうがよい。
どうしても取れないシワに限り、スティームアイロンに頼る。決してこすらないことがコツである。アイロンは当てるもので、こするものではない。
シワにもいろいろあり、上質なリネンのシワはお洒落のうちだが、醜いシワ、疲れ果てたシワはオーナーの内面をさらけだす。
シングルカフ
一般論として、シングルカフはシンプルで実用的、ダブルカフは趣味的なものである。シングルカフは実用的なものだといいながらも、礼装用ドレスシャツはシングルカフを第一とする。一般のスーツのトラウザーズは裾にターンアップ(折り返し)を付けるが、モーニングコートやディナージャケットなど礼服のトラウザーズには、ターンアップを付けてはならない。なぜなら、裾の折り返しは雨の中を走るときの「裾はしょり」の名残であって礼装になじまないからである。同様に、ドレスシャツのダブルカフも、キャッチボールや仕事のときの「腕まくり」の形であることからこれを避け、どちらもシングルにする。
シングル3ボタン
Vゾーンは高めで細身のシルエットなど、現在の主流を占める形、上2つ掛けと、第1ボタンをはずして着る段返り中1つ掛けに分けられる。
シングル2ボタン
80年代から90年代初頭に流行ったスタイルはVゾーンが深かったが、最近(01.秋)はボタン位置は上がり気味で、細身のシルエットが目立つ。
シングルノット
ネクタイの結び方の基本。もっとも簡単な一重巻き。チャールズ皇太子はダイアナ元妃の葬儀の際に、哀悼の気持ちを前身で表現するためにネクタイの結び目まで目立たぬよう目配りと気配りを利かせ、シングルノットで締めた。
シングル前とダブル前
男の基本的な服装は幾多の変遷を経て、シングル前スーツとダブル前スーツに完成されてた。由緒正しき細部デザインを具えている限り、シングル前であろうとダブル前であろうとほとんど気にすることはない。ただし、注意すべき点は、ダブル前のスーツを着ている場合、着席時を除いて常にボタンを留めておくことと、決してヴェストを着こんではいけないことである。 シングル前ダブル前の別を問わず、男の服は必ず右前に仕立てられる。これは右利きの男が件を抜く時、そのツカが前裾にひっかからないように仕立てた名残なのである。
シングルブレステッド・スリーピース
シングルブレステッドのスリーピースは、ダブルブレステッドより、フォーマル性は高い。ベストを身につけるべきときは、上着を脱がなければならないときと、公式の場に出かけるときの2つ。上衣の下で、ベストのボタンの見えるべき数は、3つボタンの上衣の場合は、1個から1個半。2つボタンの上衣の場合は2個が、エレガントに見える。フロントの一番下のボタンは飾りボタンなので決して留めてはならない。
シングル前のボタンについて
シングル前の上着のボタンは、二十世紀初頭、三つボタンであったが、1960年代には一つボタンが一時的に流行になったように、時代と共に少なくなる傾向にある。むろんシングル三つボタンのスーツは今なお着られていて、保守的なテイラーでは三つボタンこそ正統的である言って譲らない。 最近の日本では、三つボタンのスリム&ロングが流行ってますね。 しかし、サビィル・ロウでは二つボタンが一般的であり、必ず上のボタン一つだけを留めて着る。第一ボタンだけ掛けるよう、すべてのバランスが決定されているからです。故にいかなる場合でも下のボタンを留めてはならない。
ジンターラ
創業は1971年。歴史は浅いが、本国イタリアではあっという間に頭角を現わし、今やエドワードグリーンt並び称される存在に。創業当初は、オーダーメイド専門だったのだが、現在はレディメイドも手がける。徹底したハンドメイドで全工程は二百数十に及ぶことで知られる。イギリス靴の重厚、イタリア靴の優雅さを兼ね備えた逸品。とくにアンティーク仕上げが素晴らしい。
芯地について1
キャメル・ヘア、ホース・ヘアなどの動物素材は一度水に浸し、暖かい室内で乾燥させ、その後専用のスチームマシンで何度もプレスする。ソフト感とライト感を表現するためである。また、ヴァージン・ウールと動物素材をミックスすることにより、生地が軽くなり、さらにシワの復元性が高まり、伸びを防止するという。
以上が芯地の土台のキャンバスで、芯地はこのキャンバスの上に、さらにアニマル・ヘアをのせて不織布(フェルト/繊維と糸にせず、繊維のまま布状にしたもの)を噛ませ、それを糸で叩いた(留めた)ものである。これが一般的に呼ばれる芯地なのである。
つまり、単に芯地と称しても、下からキャンバス、アニマル・ヘア、不織布と3層に分かれ、それぞれがそれぞれの役割を果たさなければ、ライト感やソフト感を仕上がりに反映できないという、厄介な代物なのである。
芯地について2
ヨーロッパの一流どころのテーラーやブランドは、しなやかなラペルを作るために、芯地に凝る。芯地は企業秘密に属し、その素材や作り方はなかなか明かしてくれないが、高級な服や、既製服の場合、キャメルやホースヘアーなどの尻尾を使用する。動物の毛芯を使用する理由は、スーツの生地そのものがもともと羊毛やカシミアなど動物素材で、素材同士の相性がいいからである。
芯地は、スーツの表地と裏地のあいだに挟むため、双方と相性がよいということが条件で、高級なテーラーは一度表地と裏地に間に芯地をいれて、アイロンをかけその相性を確かめる作業を、納得がゆくまで繰り返す。それほど芯地の役割は大きいのだ。
芯地は服の生命線
芯地はいわば服の生命線で、どれほどの、たとえばスーパー150の生地を用いてスーツ作りを試みても、芯地が硬ければ、猫に小判で、似たようなガチガチのスーツしかできはしない。芯地作りの現場は企業秘密にも属するようで、ファクトリーを訪れても、よほどのコネクションがない限り、なかなか全面的には公開してくれない。
スカラップ・ポケット
フラップポケットの変形で、フラップが逆山形になったもの。スカラップはもともと帆立貝のことで、この貝の縁に似せた形をこう呼んでいたもの。スカラップはそれから転じて日本語化したものと思える。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P201)
スキニーパンツ
足にまとわりつくほどのタイト・フィッテング型スラックスのこと。スーパー・スリムとも呼ばれる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
スキャバル(Scabal)~1~
スキャバルは、ブリュッセルに移住したドイツ人、オットーハーツ氏により1938年に創立された。社名でありブランド名である「Scabal」は English,Belgian,German and Luxembourg Trading Company のフランス語のイニシャルに由来する。
本社をブリュッセルに置き、織工場は英国に、服作りのビジネスはドイツで展開した。イタリア人の職人の助けを得て、ネクタイ、ワイシャツ、ニット、ベルトなどの周辺製品も生産している。
製造された生地はスキャバルのブランドで販売されるのみならず、ランバン、ブリオーニ、セルッティー、スマルトなどの有名ブランドにも供給されている。
Scabal~2~
各国に販売代理店を持つ世界最大のウールマーチャントであり、常に4000~5000種の在庫を揃えているスキャバル社。品質に強いこだわりを持ち、微妙な色の違いや細かい欠陥を見落とさぬよう1センチ刻みのチェックに合格した素材だけが最高級地として使用される。
スクエア・カット
前合わせの部分の裾に丸みを持たせず、角型にカットされた裾のデザイン。
スタンド・カラー → スタンドアップ・カラー / スタンディング・カラー
「立ち衿」の総称。ネックラインからまっすぐに立ち上がった衿をいうもので、ふつう、帯状の一枚布となったデザインが多い。シャツやブラウス、またジャケットなどに見られるそれをいうことが多く、セーターなどニットウェアに見る同様のデザインはハイネックとかタートルネックというように、カラーではなくネックの言葉を用いる。スタンドカラーは和製英語で、正しくはスタンドアップカラーなどという。
スクエア・フロント
上着の前裾丸みをつけず、角型にしたもの。レジャー用のジャケットなどによく見られるデザイン。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
スクエア・エンド・タイ(Square-end tie)
先端が水平にカットされたネクタイ。「角タイ」とも呼ばれる。
両端が垂直にカットされた蝶ネクタイのこと。「ストレート・エンド」ともいう。
スカラップ・ポケット(Scallop pocket)
フラップ・ポケットの変形。フラップが逆山型になったもの。スカラップとは帆立貝のことで、このフラップの形を貝にたとえてこう呼ぶ。
優れたテーラー
優れたテーラーは、仮縫いを重視する。彼らは、仮縫いで、客の肩線の傾斜角を整える。四角い肩や丸い肩を、いかに格好よく見せるか補正する。ウェストの絞り込みを巧みに調整する。仕立てとは、服の骨組みを、客の体にそっくりそのまま沿わせることだ。個々の骨組みには、細かくいえばミリ単位の無数の選択肢が用意され、それを適宜に用いるためには、テーラーの勘と感性がものをいう。熟練の技を持つテーラーは、一目で客の体の特徴を見抜き、完成した服をイメージできる。
スクエア・ショルダー(Square shoulder)
角張って、先がやや持ち上がっているような背広の肩線。
スクエア・トウ(Suquare toe)
靴型の一つで先端が角型のものをいう。
スクリム(Scrim)
木綿あるいは木綿とポリエステル混紡で作られた目が粗い網織地。
スコッチ・ツイード
スコットランド産ツイードの総称。単にスコッチとも呼ばれる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
スタイル
「型、様式」の意味で、多用な使い方がなされる。ファッション用語としては流行型、流行様式のこと。ファッションと同じ意味ともされるが、しいれ分ければ、ファッションが変化するものであるのに対し、スタイルは固定したものといえる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
スーツ(Suit)
ジャケット,ベスト,スラックス,の3つ、またはジャケットとスラックスの2つを同生地,同色柄で仕立てたもの。背広とも言う。
スーツ選びは自分で
春物スーツがほぼ出揃い、休日になるとデパートやショップのスーツ売り場が賑わっている。パリやミラノに比べ、日本の男性たちの服選びは、なぜか女性を連れていることが多い。
高級紳士服を扱うある銀座の店のオーナーは「八割方の男性は女性連れで訪れ、購入の決定権は、スタイル・価格ともに女性が持っている」という。
日本の男たちは自分でスーツを選択できないのだろうか。女たちの目は確かに鋭いものがあるが、女の服同様外見を重要視する傾向がある。夫婦や恋人であれば当然贔屓目(ひいきめ)も入るだろう。
男たちが女性に服選びを任す理由は、選択眼に自身が無いためだろうが、そうであれば、彼らは特定の女たちのためだけに装っていることになる。着るべき場所は職場なのである。大半の女性たちは、その肝心の職場を知らないのだ。
男たちは、まず自分の職場やどんな人間に会う機会が多いか想定し、普段からスーツスタイルを絞り込んでおくべきだ。スタイルを大別すれば、クラシックとモダン(デザイナーズスーツ)、クラシックにややソフトさを加えた中間の服の三種になる。職種にもよるが、中でモダンだけが、ビジネスには不向きである。(中略)
ビジネススーツは職場の服で、そこで働く男たちだけが知る服である。女たちが身につけるわけではない。
スーツが社会的ルールにのっとっているか?
女王陛下のデザイナー、ハーディー・エイミス卿が、ことあるたびに「スーツはルーツを優先すべきである。あくまでも社会的ファッションであり、社会的ルールにのっとった服こそ正しい服なのだ。と述べている通りであろう。卿の言葉には二つの意味があり、一つは伝統に裏打ちされた正しい服を着るべきであるということと、もう一つはどこに何を着ていくかである。この大きな条件をクリアしていれば、スーツはスーツとして機能するのである。
スーツ姿に気配りを
ヨーロッパの服の伝統は、それをまとった時、肉体を忠実になぞっている。中世の服と形こそ違え、根底の思想は同一で、スーツが誕生した頃の英国では、スーツを着た体を裸の抽象形と考えた。
スーツは成形や詰め物、それを補うための優雅な所作の習熟という、長い歴史を経て登場した服なのである。ヨーロッパの国の人々のスーツ姿が格好がいい理由は、衣装のそなえた思想、それを具現する人との伝統的共同作業によるものなのだ。
我々は日本古来の服を着ているわけではない。だからこそ、もっとスーツスタイルに気配りを見せてほしいと思うのである。
スーツで装うという意味
男がスーツで装うという意味は、首から下を自分自身でデザインすることである。デザインする上で女と異なる点は、ネクタイを除けば選択できる色がほぼ限られていること、露出部分が、常に手首の先だけということである。これが男のおしゃれをますます難解なものにし、どんなスーツやネクタイを身につけていいか分からないまま、右から左へブランドに走ってしまう大きな理由である。
デザインとは、換言すればバランスのよさである。たとえば、もう亡くなってしまったが、サミー・ディビス・ジュニアは、タイトなアメリカンコンチネンタルスーツに、ナローカラー(角度の狭い襟)のシャツと細身のタイを好んでコーディネイトし、彼自身のスリムなシルエットを見事なまでに主張した。
クォリティの高いスーツは「男にとってもっとも裸に近いもの」といったのは、イタリアの高級既製服ブランドであるブリオーニのオーナー、ウンベルト・アンジェロニである。
サミー・ディビス・ジュニアの巧みな着こなしは、彼が自分の体型を把握し、トレンドに左右されることなく、ひたすらにバランスに留意し、「裸に近い」シルエットを追い求めていたからにほかならない。スリムなスーツには、スリムなタイをフィットさせるべきで、ワイドなタイは調和を崩す。
スーツが武器に
国際舞台で通用するスタイルとは、ここのプロポーションを忠実になぞった癖の無い服である。服が目立つことがなければ、中に収容された個性がより強く浮き彫りになる。近代社会が、ほぼ一世紀の歳月をかけ熟成させたイギリス生まれのスタイルだ。逆にソフトがかったスタイルとは、あちこちを強調したデザイン性の強い服のことである。
(中略)
たかがスーツと侮ってはならない。とりわけ国際舞台では、スーツは自分の意図をストレートに相手に伝達する雄弁な武器に変質する。我々は、ビジネスの明確な目的に沿って、個性を演出するスーツ、ポジションを強調するスーツ、相手に懐に飛び込みやすいスーツ、威圧的なスーツを意図的に選択し、それに合ったコーディネイトを試み、そこに思惑を込める必要があるのだ。ただし、どんな場合でも中に人間が鮮明に見えることが条件である。
スーツと時代背景
時代背景によってスーツの印象は変化する。たとえば、1929年ウォール街の大暴落が始まると、1920年代の華やかなファッションは消え、重く、ダークな、ゆったりとしたスーツが主流になる。ダブル前のスーツが流行し始めるのもこの時期。しかし、1960年代に入るとふたたび軽快なるスーツが人気を集めはじめる。ベストも省略されるようになり、ボタンの数もシングル3つボタン型から2つボタンへと移行する。と同時に身体に軽くフィットする、明るい感じのスーツが支持されたのである。
ここ数年の日本では、相変わらずスリム&ロング、三つボタンで色は黒、グレイ、濃い紺などのダーク調が主流。しかし、軽い色合いのジャケットもちらほら出始めてる。
たしかに時代背景によってスーツの印象は変化するが、根本原理は不変である。その時代背景がいつであろうと、タウンウェアは着ているものの社会的地位を映し出す鏡である。つまりネクタイの趣味は育った環境をあらわし、スーツは収入をあらわし、スーツは収入をあらわし、シャツと靴は伝統と美意識への理解度を示す。
スーツについて
スーツは、初めはcoatと呼ばれていた。いちばん上に羽織るものはすべてコートであり、コートはもともと「外被、毛皮、塗装」などの意味である。
スーツが発生した少し後の時代、19世紀以降になって初めて、衣服の上に重ねる戸外用衣服としてオーバーコートが登場し、現在に至っているのだが、イタリアや英国ではいまだにスーツをコートと呼んでいるテーラー達もいる。
英国でのもともとの呼び名は「ラウンジコート」で、意味は「くつろぐためのコート」で、それがスーツという名前に変化したのは、スーツには「適応させる。合わせる」などの意味があるためで、これは18世紀に、身分や地位により分類されていた服が、スーツの登場によって万人向きになったことを意味している。
スーツには紐付きの靴を!
スーツには紐付きの靴を。これは基本である。ローファーはジャケットまでは許されるが、スーツの足元を飾るにはあまりに心細い。スーツ姿にワンポイントの紐なし靴も見苦しい。イタリアではまず見かけない光景だ。紐付きの靴は、ネクタイ同様の効果を持つアイテムなのだ。
ただし、紐なしといっても、モンクストラップ(尾錠留めのついた靴)はその類ではない。こちらは、ロンドンのビジネスマンたちが愛用していることでも分かるように、正統かつクラシックな靴である。
スーツに水をはじく機能は必要か?
週に数度、スーツのちらし広告が、朝刊と一緒に我が家に舞い込みます。
水を弾くスーツ、型崩れしないスーツ、リクルートスーツなど、欧米では考えられないような不思議な名称と、賑やかな写真が満載されてます。 日本人にとって、スーツとは何なのかなと考えさせられる広告です。
スーツとは、ビジネスを主眼とした服で、一日中身につけていても疲労しない着やすさ、ビジネスから逸脱しないスタイルであることだけが条件です。
水を弾くスーツは、「表面素材に防水スプレーを吹きつけたような服」(防水ではありません)と、ショップでは説明します。スーツに水を弾く機能が必要なのでしょうか?
型崩れしないスーツは、繊維の分子を無理やり固定しているのでしょう。分子が固まれば、体を被うナチュラルな感じは、当然失われます。
リクルートスーツとは、就職のための、無個性なスーツのことでしょうか。
スーツにそんな風な細工を試みたり、名称をつけることがよく分からないのです。スーツそのものの価値より、水を弾いたり、型崩れしないという付加価値(実際に価値があるのかどうか知りませんが)のほうが大切なのでしょうか?
付加価値は、売るための一つの便法ですが、主体ではありません。あってもなくてもいいのです。「カーナビ付きの車」の、「カーナビ」の類です。
我々は、車を選択する時、「カーナビ」という言葉は無視すべきです。なぜなら、我々は車を購入しようとしているので、「カーナビ」を購入しようとしているのわけではないからです。「カーナビ」につられれば、我々は車の正しい評価を見誤ります。
付加価値は、主体であるモノの品質が同等の時、初めて選択基準の一つになり得ます。(他の同じような商品に比べ)いかにも特別な商品であるような広告は、たいていの場合、付加価値にすぎません。
スーツに限らず、モノの選択は、常に主体に焦点を定めること、それが正しい評価の下し方です。
スーツの基本は控えめに
ビジネススーツは、上品でクラシックなことが条件です。服で自分を目立たそうと考えると失敗します。目立つほどに個性が失われ、スーツやネクタイが独り歩きをしていきます。
外国のデザイナーたちの、スーツの広告を思い浮かべてください。すべて個性的なモデルばかりです。スーツのそなえたパワーに負けないために、強烈な個性をそなえたモデルが必要なのです。
でも、現実的には、人と服と双方ともに目立つスタイルはあり得ないと考えてください。
衣服ばかりが目立つ端的な例を挙げましょう。医者の白衣です。
病院を訪れた時、患者は医者の白衣で安堵感を覚えます。子供は白衣を見て泣き出すかもしれません。
医者の白衣は、それほどの効果をそなえている反面、病院を出て、しばらくして先生の顔がどうしても思い浮かばなかったという経験をなさった方はいらっしゃると思います。白衣が、医者の個性を薄めてしまったのです。目立つ衣服は、もともとそういう性格をそなえているものなのです。
黒いセーターを着た人たちの中に、一人だけ赤いセーターを着ている人が混じれば、大半の人は赤いセーターに注目するはずです。それは赤いセーターが目立っただけで、着ている人が目立っているわけではありません。
目立つことだけを目的にした、昔の権力者達の奇抜な服装は、人も衣服も目立たせるパワーを持ち得たでしょうが、近代社会の衣服は、目立つほどに、それを身につけた人の印象を希薄にする作用をそなえているのです。スタイルが一律化してしまったからです。
近代社会のスーツの目的は、人々が集まって話し合いをするためのものです。英国で、背広が、lounge(社交室)suitと呼ばれるのは、その理由によります。
話し合いには、個々のキャラクターが必要で、スーツは、その人のキャラクターやパーソナリティを、より強く前面に押し出す脇役です。そのためには、目立つことは厳禁なのです。ビジネススーツの形が画一化し、黒かグレイに落ち着いた理由もそこにあります。
まず、控えめに。それがスーツスタイルの基本です。
スーツの色について
ダークブルーはビジネススーツに最適の色。伝統を尊重するシティのビジネスマンは必ず、ダークブルー、ピンストライプ柄のスーツを着ていたので、このスーツは世界中のどこであろうとまるでパスポートのごとく通用する。
黒は、最も格式高い色。ブラックスーツをブラウニングは次のごとく位置付けた。「かつて洗練の極地とされた服装の末裔であり、その真摯なる表情は今なお変わることがない」
ダークグレイは、アメリカのスピーディーで、精力的なビジネスを好む人々にはことの信奉されているようである。
ブラウンはカントリーで着るべき色。事実、会社のなかにはブラウンのスーツは「プロの思想に反するもの」と明言しているところさえあるほど。
スーツのディテール
我々はしばしばスーツのディテールという言葉を安易に用いるが、スーツのディテールとはいったい何だろうと思うのである。服飾辞典類を探ると「細部・デザイン」なるおおまかな言葉で説明されてるが、「細部・デザイン」は、むしろトレンドやテイストを意味するのではないだろうか。ゴージ・ラインやボタンの位置の上下、ベントの切り方、そしてはやりの本切羽などが、果たしてディテールといえるのだろうか。これらはいずれもトレンドに関連した、個々の好みの範疇の問題であろう。
スーツメンテナンスの基本
メンテナンスの基本は洋服に休養を与えること。同じアイテムは2日続けて着ないこと。帰宅したら必ず軽くブラシをかけ、肩のしっかりしたハンガーにかけて、風を通すこと。クリーニングに出すよりも、日常の手入れをこまめにすることが基本。
スーツのバランスの良さ
スーツのバランスの良さは前よりも後ろに現われる。背中の美しさは仕立ての良い服の証で、これは脇の下からウェストにかけた、いわゆるテーラードラインの美につながり、テーラードラインにめりはりを持たせるためには、絞り線(ウェストライン)の位置が重要な意味を持つ。
スーツの布地と体のずれ
衣服を着て動き回るという行為は、たくさんの継ぎはぎのあるキレを、一度に動かすことを意味する。
正しいクラシックスーツは、体とともにキレがすべて動き回る。キレが上手に体にまといつき、それが自然で巧みな着こなしにつながる。
上質な羊毛繊維がたくみに連結されていれば、動作とともにキレ全体がうごめき、動作を制止すれば、それは一瞬にして元に戻る。
羊毛繊維の柔軟さと、連結部分にほどこされている精巧な縫製がクッションの役割と担っているからだ。
体に合わない服は、裁断と縫製のまずさにより、体とキレの動きにずれを生じる。肩が動いても、体にキレがまといついていないため、厳密にいえばキレだけが肩の位置に残る。
これは肩だけの問題ではなく、全体の問題で、あちこちの少しのずれが、醜い着こなしを生むのである。キレと体がともに動かない大きなスーツを着ている人はしばしば見られる。できの悪い既製服の証である。
スーツの中で、体が遊んではならない。体が遊ぶルーズなスーツは、もっとも醜い衣服である。ルーズフィットとは、ただルーズなのではなく、フィットすべき部分は、完全にフィットしているスーツのことをいう(すべてがルーズでは決してないのである。)
長い袖と裾丈は禁物である。フィットしてないことが一目で分かる。
正しい着こなしの第一の条件は、体にフィットすることである。フィットは正しい姿勢を生む。
スーツの分類
クラシックなスーツスタイルは、ゲルマン系,ラテン系,アメリカ系,の3種類のみである。ここでいうクラシックなスーツとは、グローバル・スタンダードなスーツで、社交、または(上品な)ビジネススーツにも代用できるもっとも正しい伝統的なスーツのことである。
また、スーツは、社交/クラシックスーツ,ビジネス/ビジネススーツ,街着/カジュアルスーツ,の三つに分類される。カジュアルスーツとは、多くのデザイナーたちのスーツである。
スーツは肩
スーツを「身につける」「袖を通す」という表現はあるが、正確にいえば、スーツは肩に「ぶら下げる」ものであって、胴体や腕だけではスーツは着られず、だからスーツは肩だという道理は正しく、その理論を煎じ詰めていくと、肩への“イセこみ”こそスーツ作りの生命線で、イセこみにより服の着心地の良し悪しの大部分が決まってしまう。
ステッチ(Stitch)
針目もしくは縫い方、刺し方のこと。
縫い。飾り縫い。縁または縫い目を手縫いあるいはミシン縫いとして飾ること。ミシン飾りには細一本、中一本、太二本、細二重、中二重、太二重、三重、四重、などがある。ふつう背広には細一本、外套には太二重のステッチが多い。
ステッチドエッジ(Stitched edge)
ブレザーの衿や前合わせなどの端にステッチをほどこして処理したもの。
ステファノ・ビジ
3代続く、ナポリのネクタイブランド。モダンとクラシックの双方を手がける器用さを持ち合わせる。
ステンカラー → コンバーティブル・カラー/ バル・カラー / スタンド・アンド・フォール・カラー
いわゆるステンカラー・コートで知られる衿型。第一ボタンをかkても外しても着られるようになった二重衿のことを、日本では俗にステンカラーというが、これは完全な和製語。英語では両用型ということでコンバーティブルカラーの一種ととらえられ、より一般的にはこれに似たバルマカーン・コートの衿型から、バル・カラーという。経常的にスタンド・アンド・フォール・カラー(立ち上がって折れたの意)といってもよい。
ズート・スーツ
第二次世界大戦直前のアメリカで流行した、極端に誇張されたシルエットをを持つスーツ。厚いパッドが入った広い肩、胴は思いきり絞られ、丈は膝まで届くかと思われるほどに長い。パンツも、深いプリーツ、深い股上、細く絞った裾とこれも極端なデザイン。ほんの一時の流行ではあったが、時折、現代のデザイナーにも、この影響が見られる。
ストレート・ハンギング
アイビー・リーグ・モデルやトラディショナル・モデルの背広のシルエットにみられるライン。 ボックス肩のずん胴なそれをいう。ちょうど肩で吊ってまっすぐな感じになるところから呼ばれる。実際に前ダーツもとられていない。ナチュラル・ショルダーと並んでトラディショナル・モデルを象徴する言葉とされている。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
ストリング・タイ
ストリングとは紐のことで、紐状の布や皮革などを使用したネクタイ。「ボーロー・タイ」「ウェスタン・タイ」「コード・タイ」ともいう。
ストール(ロロ・ピアーナ)
クォリティの高いカシミアのストールの見分け方は、手に持った時さらさらこぼれ落ちるといったらいいのだろうか。たよりないほどの軽さ、柔らかさがカシミアのストールの最大の条件の一つである。
170年以上の歴史を誇るイタリア屈指の毛織物メーカー、ロロ・ピアーナのカシミアの大きな特徴はこの軽さでもある。年々カシミアの質が落ちている中で、ロロ・ピアーナのカシミアは均質を保ち、デザイナーズブランドにもしばしば用いられている。
スーパー120の本当の価値
最近、メンズのスーツ売り場で、生地の素材(ウール)表示がなされたスーツをしばしば見かける。「スーパー100」「スーパー120」といった類だ。数年前までは、ほとんど見かけなかった現象である。
スーパーの数字が高いほど素材が高級とされ、国際協約にしたがったもっとも高い数値は150だ。高級ブランドの中には、それ以上の数値を発表しているところもある。
150素材は、一キログラムの綿糸をばらして糸にひいた時、150キロメートルまで伸びるものをいう。同じく120は92キロ、100は70~75キロまで伸びるとされる。
伸びて細いほど、靭やかな着心地を約束してくれるというのが売り手側の言い分だが、この数字はあまりあてにしないほうがよい。理由は二つある。一つは、確かに数値が高いスーツほど柔らかな感触なのだが、どれほど素材が優れていても、縫製が悪ければ、その上質の素材感を発揮できないからだ。生地そのものと、仕立てあがりの着心地は別なのだ。
もう一つは、同じスーパー100でも、メーカーによりばらつきがあるためである。ハイテク仕上げの100と、服地のために、糸の環境作りが整備された100とではだいぶ開きがある。綿糸の扱いは、初めは糸が緊張し、服地には使いづらい。温度(摂氏17度)と湿度(70%)を保ち、糸のコンディションがよくなるのを1~2年待つ必要がある。ハイテク仕上げは、それを短期間で無理やり整えてしまう。
スーツ購入の際は、あくまでも袖を通した着心地で選択し、数値は無視したほうが賢明だ。売り手側は、高い数値を必ず薦める。
一般的にいえば、ビジネス素材のための数値は80ほどで十分だ。それ以上になると、柔らかすぎてすぐにシワが出る。
もっとも安定した素材は英国産で、光沢のあるぬめり感と、スーツを着た時、プロポーションを崩さない一定の硬さをそなえている。ストライプやチェック柄に同一パターンが多いのが特徴で、全体的には地味な印象である。
その点、イタリア産は、柔らかく色目も豊富だ。奔放な柄も多い。日本製のビジネススーツにも、英国やイタリアの素材が使用されているので、スーツ購入の際は、しらべてみる価値はある。
ただし、オーソドックスなスーツには、やはり英国素材がよく似合う。
スーパー100’S (Super hundreds)
高級スーツ地などに良く見られる表示。100番手を意味するが、羊毛番手のことで糸の番手とは異なる。17~18ミクロンのスーパー・ファイン・ウールを原料に使っていることを意味する。
スーパー150’S
一キログラムの綿をばらして糸に引いたとき、150キロメートルまで延びるものをいう。その糸で織られた素材は一般的には最高級スーツ生地とされる。
スーパーの補足
スーパーとは原毛の太さをあらわす単位で、生地の柔らかさに与える影響は決定的である。スーパー120’sと150’Sの違いは、その生地の国籍、織りに関係なく明らかである。。しかし、一般のビジネスマンの方には90’S~120’Sで十分である。
耐久性、アフターケアを考えると120’Sオーバーの生地はもはや趣味の世界であるが、軽く、着心地がよく、光沢感,質感という見た目が明らかに高級である。
スーパー100’Sは糸の番手ではない
高級スーツ地に「スーパー100’Sというような表示をみかけます。この、「100番手」は糸の番手ではありません。「羊毛番手」です。17~18ミクロンの「スーパーファインウール」の100番手の「羊毛」を原料に使っている、ということを表示しているのです。100番手の「糸」を使っているのではありません。
ですから、「スーパー100’S」のスーツ地は、必ずしもライト・ウェイトどは限りません。スーパー100’Sの原毛を使って、48番手の糸で織ったスーツ地は、厚手の織物であっても「スーパー100’S」と表示するからです。
スーパー何々の数字が多くなればなるほど、原毛の太さは細くなりますから、その光沢、手触り感、美しさも自ずと上質になります。しかし、あまりに細すぎると、耐久性に劣りますので、注意が必要になります。購入の際にはスーツを着るTPOを考えなければなりません。
スーパー100がいいのか、スーパー150がいいのか・・・。
どちらがいいというのは、一概に言えない。150は細い糸で織られ、100はそれより太いだけの話。問題は、太い糸はなぜ太いか、細い糸はなせ細いかだ。服の素材は、それをどれくらいの時間、どこに見につけて行くかが大前提になる。150の柔らかさは、袖を通した時は確かに魅力的だが、皺を戻すのはたいへん。細い糸は指のささくれなどにもひっかかる。100は多少柔らかさに欠けるが、全体にかっちりした感じをかもし出す。頻繁に袖を通すスーツなら100のほうが安心だ。
決して、数字が高いほど高級、高品質という目安にはならない。数字が高いほど、値段は高くなりますが・・・。
スケルトン・バック(Skelton back)
背抜きのこと
背抜き(セヌキ)
肩の付近だけに裏地を付ける。すなはち、背中の下三分の二が裏地無し。背抜きにすると軽くなる。主に春夏物に採用される。
スコッチ・ツイード(Scotch tweed)
スコットランド産のツイードの総称。先染めの横糸に無地の白の縦糸を2×2斜文織にしたツイードでチュビオット・シェットランド・ハリスなどの種類がある。
スタンド・カラー(Stand collar)
立衿のこと。ネールカラーはインドの政府高官の着る上着の立衿を元首相のネールにちなんでこう呼ぶ。マオ・カラーは中国の人民服の立衿を元首席の毛沢東(マオツォートン)の名にちなんだもので、どちらも明確な区別はない。
ステッチド・エッジ(Stitched edge)
ブレザーの衿や前合わせなどの端にステッチをほどこして処理したもの。
スティックピン
スティックピンは18世紀に大いに流行し、主としてクラヴァットを留めるのに用いられた。ことに人気があったのは頭に象牙細工や宝石をあしらったスティックピンで、ナポレオンはカメオの飾りを好んだという。ヴィクトリア女王崩御の際、人々はジェット(木が永い間に黒い化石となったもので、黒玉という)やパール(涙の象徴)のスティックピンを挿すことで哀悼の意を示したのである。最近ではアンティックのピンを襟穴に飾るのが粋とされる。今日のピンといえば、クラヴァット用ならぬネクタイ用であり、短い針に着脱自在の留具が付くスタイル。さらに細い鎖が具えられていて、この先をシャツのボタンに留めておくと紛失の心配が無い。タイ・クリップ(シャツをタイを横から挟んで留めるタイプ)を細いネクタイ意外に用いるのは、できるだけ避けたい。
ステン・カラー・コート
ステン・カラー(コンバーチブル・カラーの一種で、第一ボタンをはずしてもかけても着られる二重襟のこと) を特徴としてコートの総称。多くはラグラン・スリープ、フライフロント仕立てで、ニー・レングス・タイプのものをいう。この衿型は正しくは「スタンド・フォール・カラー」、「ターン・オーバー・カラー」などと呼ばれ、「ステン・カラー」は和製英語である。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
ズート・スーツ
1940年代初期に流行した、極端にだぶだぶしたシルエットを特徴とするスーツ。上着丈はたっぷりと長く、袖口で急につまった感じのスラックスを合わせる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P203)
スパッツ
白やグレーのリネンなどでできた靴カバーの一種。19世紀から20世紀にかけては男女とも用いられ、とくに男子の礼装用として多く使われた。1920~30年代の男の足元によくみられる。靴の上からくるぶし部分を覆うもので、多くはボタン留めとされる。語源は防寒用、泥除け作業用スパターダッシズ spatterdashes からである。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P205)
スプリットラグラン・スリーブ
ラグラン袖とセットイン袖を組み合わせたショルダーデザイン。フロントからはセットインスリーブのように見える。
スプリット・ラグラン
ラグランスリープの変種で、肩の縫い目から前が「セット・イン・スリープ」(普通袖)、後ろが「ラグランスリープ」となっている。袖のこと。「ワン・サイド・ラグラン」ともいう。コートなどにももちいられる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P205)
スプリングコート → トップコート
春や秋に着る、薄手の素材で作られた軽いコート。ほこりよけと防寒を兼ねたもので、春と秋という寒暑の間の季節に着ることから、俗に「合いコート」とも呼ばれる。これは完全な和製英語で、外国ではトップコートと呼ばれるコートに該当する。ここでいうトップとは「いちばん上に着るもの」という意味で用いられているもので、欧米ではオーバーコートより軽い感覚のタウンコートをこのように総称する。
スプレッド・アウト(Spread out)
ダブル・プレステッドのジャケットのボタン配列の一種。異配列ともいう。2列のボタンがV字型に並んだもので6釦によく用いられる。
スペンサー・ジャケット
スペンサーとは、もともと18世紀末から19世紀中ごろまで流行した、短いコートの名称である。これに似せたウエスト・レングスのジャケットをこの名で呼び、現代に再び登場している。初めて着用したといわれるジョージ・ジョン・スペンサー(1758-1834)の名前に因んだものである。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P205)
ズボンの折り返し
クラシックなスーツのズボンには、燕尾服やモーニング、さらにタキシードの例をだすまでもなく、もともと折り返しが付いていなかった。だが現代のスーツでは、むしろ付いていた方がクラシックに見える。折り返しがないズボンはエレガントではないと断言するイタリア人もいる。ラウンジスーツが誕生した頃の生地は非常に重量感があり、折り返しという発想自体が存在しなかった。20世紀初めに英国のある貴族が、ニューヨークで行われた結婚式に参列する途中雨に遭い、ズボンの裾を折り曲げ、それが定着したという歴史を持つ。男の服は、たいていの場合単純と偶然から進化する。
現代の生地素材は当時に比べ、ずっと地が薄く、糸も細く繊細な細工がほどこされているため、折り返しを付けないと足元が不安げに見える。折り返しを付けることによって重量感が加わり、靴とのバランスがスムースになる。折り返す幅は、スーツスタイルによって違ってくるが、目安は3,5~4センチまで。その範囲外は、たいていの場合バランスが悪くなるか、下品な印象を他人に与える。
折り返しは、生地と素材との関係、ズボンとのバランス、またはスーツスタイルによる変更であり、実用とは関連が無い装飾性から生まれたもので、したがってクラシックの範疇である。
ついでながら、日本の洋服屋はズボンの折り返しを内側からホックで留めるが、ホックは上から見るとキラキラ光り、英国やイタリアのように目立たぬ色の糸で固定する方法が正しい。
ズボンのシルエット
ズボンのシルエットは、足の長短がはっきり表現されるので注意を要する。上衣はクラシックの範囲内で多少遊ぶことができるが、ズボンはその点、体の欠点がすぐに出るので自然なラインに徹するべきである。
ズボンの裾幅は、靴の4分の3を覆う程度に。これはスーツが着られるようになってから、変わらない鉄則である。
クラシックなズボンの前のプリーツ(タック)は左右2本づつが原則で、プリーツの襞が外側に向いているものと内側に向いてるものがある。どちらかを選ぶかは、個々の好みよるが、現在は外側向きのプリーツが多い。
ズボンの裾丈
ズボンの裾丈は、紐付きの靴を履いて踝上1,5~2センチが正しい。裾が靴に当たり、少し折れる程度である。ただし、人間はほとんどの場合左右が異なるサイズなので、仮縫いでの微調整が不可欠である。
ズボンのポケットについて
両サイドのポケットは、わずかな傾斜を付けるべきである。ポケットは、馬から車へ、さらに個々が必要とする収納物によって、装飾性とはほとんど関係なく、時代の実用として形を変えてきた。ただ、クラシックなスーツのプリーツを考えた時、ポケットはいちばん外側の第3のプリーツとしての美の要素を具え、したがって直線ではなく傾斜を具えた方が、全体のシルエットを整えやすい。
ポケットの入り口の長さは15~18センチにとどめるべきである。
ヒップポケットは、アメリカ人が拳銃を入れるために考案した実用本位のものであり、拳銃を日常的に持ち歩く人、あるいは拳銃の代わりに財布を入れる人は別として、シルエットを優先したい人には不要である。どうしても付けたい人はフラップ(蓋)なしのものがクラシックである。
ス・ミズーラ
ミズーラはイタリア語で「寸法」の意。一人一人の寸法に合わせて、特別に作られる、注文服(靴)と既製服(靴)の中間に位置する製法。
ス・ミズーラ~2~
イタリアには、注文誂えという意味の、ス・ミズーラ(su misura) という言葉がある。ミズーラには、「寸法」で、文字どおり、寸法を測って仕立てる物のこと。身につけるものなら、何でも特別に作ってくれる。スーツ、靴、ワイシャツ、靴下、ボクサーパンツ(下着)、パジャマ、ハンカチ、etc. スーツ、靴、ワイシャツ以外は最低1ダースから受け付ける。ただし、機械生産のス・ミズーラである。手縫いのス・ミズーラは一枚単位で受注するが高価である。しかし、総じて日本より上質である。
スモーキング
スモーキングという服は、20世紀初め頃からよく用いられるようになった。イギリスでは別にディナージャケットという名があるし、アメリカにはタキシードの名がある。ちなみにタキシードというのは、もともとニューヨークのタキシード公園の社交クラブの名であった。
劇場や夕方の小宴会用だったが、とくに男だけの集まりに用いられた。生地は黒の毛織物で、ズボンには折り返しがなく、上衣の襟の折り返しと、絹のヴェストも同色、のりづけした胸当てとフロック用カラー、黒の蝶ネクタイ、ラッカーの靴というスモーキングジャケットは英語の辞書には文字通り「喫煙服」となっている。 スモーキングルーム(喫煙室)のところにはスモーキング・トーク・ルームというのがあって、喫煙の話(女性抜きの男同士の談話)となっている。これこそスモーキングの本質である。スモーキングルームは社会的な実権を握っている男性達の特権の場であり、そのような場所をつくり出すのに役立ったのが、タバコだったのである。
スラックス → パンツ
いわゆる「ズボン」をいう英語だが、日本では替え上着と組み合わせて用いる「替えズボン」や女性用テーパード(裾すぼまり)型のカジュアルなパンツをさすニュアンスが強い。スラックとは「ゆるい、たるんだ」の意で、もとは「だぶだぶの袋」を意味する軍隊用語としてアメリカで用いられていたが、1930年代になって一般化し、やがて本国では使われなくなってしまった。ズボンという意味からすれば、アメリカではパンツというのが適切だろう。
スラックス
いわゆる「ズボン」のこと。初め軍隊の俗語で
だぶだぶの袋」を意味していたが1930年代、セパレーツ形式のゆるいスポーツ用ズボンの使われ、やがてズボンに一般の総称となった。欧米ではほとんど使われない言葉で、非常に日本的な感じのする英語である。一般に「替えズボン」の意味にとられている。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P205)
スラッシュド・スリーブ(Slashed sleeve)
袖口に切り込み(スラッシュ)をいれた袖。
スラブ・ヤーン(Slub Yarn)
意匠糸(ファンシーヤーン)の一種。ところどころに雲状の節を持った糸。粗紡糸,始紡糸,雲糸とも呼ばれる。
スラブ・ヤーン
間隔をあけて、糸のところどころに意識的に節のような太い箇所を入れ込んだ糸です。毛玉ではないので、着用してて取れてしまうことはありません。
スランテッド・ポケット
スランテッドは「斜め、傾斜」という意味で、斜めに付けられたポケットのこと。別名スラント・ポケット、オブリーク・ポケット。クラシコイタリア・スーツの上着では、かすかに曲線を描くように人の体に沿うよう工夫されている。
スリークォーターレングス
コート・レングスのひとつで、「3/4丈」「七分丈」のこと。総丈の3/4を意味する。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P205)
3パッチポケット スーツ(Ⅲ型)
トラッドなプレザーの典型では、胸と両サイドについたパッチポケットがその大きな特徴になっている。このデザインをジャケットやスーツに取り入れたタイプを、80年代、日本では独自にⅢ型と呼んだ。全体に非常にスポーティなイメージで、ウィークエンド・スーツというような位置付けだった。
スリーピース
スリーピースは、衣服の重ねの発想が根幹に存在する。重ねて、それなりの内衣(ベスト)を覗かせれば、服装を上品に整えやすい。整えるための条件は、分量の多い外衣(上衣)に対して、分量の少ない内衣をどれほど覗かせるかだ。クラシックなスタイルのベストは、常に定型でなければならない。ボタン数は6個、ボタンとボタンの間隔は5センチ(体型により上下する)。2つボタンの上衣の場合は、ベストのボタンを2個、3つボタンの場合は、1個から1個半見せる。
スリーピース → スリーピース・スーツ / ディトーズ(dittos)
スリーピース・スーツの略。上衣、チョッキ、ズボンの3つを同じ生地で仕立てて組み合わせた一式で、いわゆる「三つ揃い」「三つ組み」の背広をいう。スリーピースは、三つの部分から成るものの意で、単にスリーピースというだけでは、ジャケット、ブラウス、スカートあるいはパンツの三者を組み合わせた婦人服のことも意味するから、注意が必要である。本当のシャレものなら、きちんとスリーピース・スーツ、またはもっと本格的にディトーズなどといってもいい。
スリーブ
シャツ、ジャケット、コートなどの「袖」のこと。種類としては、セット・イン、ラグラン、セミ・ラグラン、スプリット・ラグラン、ドルマン、キモノ、エポーレット、ドロップ、ショルダー、キャップ、ベル、パフ、パピヨン、ブラウス(ビショップ)、シープ・レッグ(チキン・レッグ)、トランペット、テーパード、カフド、フレンチ型などがある(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P206)
スリップステッチ
スリップステッチは、バイアス製法を考案したラングスドルフに考案された大剣中央の一本の糸。ネクタイの復元力を増すためのもので、この糸を引っ張り、縦皺がよれば、そのネクタイは上質である。
スロートタブ
上襟についたタブ。スロートは英語で「喉」の意。タブにはボタンホールがついており、襟を起こして留めると喉の部分に当たることから、この名がついた。
スロート・タブ
カントリー・ライクなジャケットなどにみられる、上衿に付けられた小さな持ち出し(タブ)のこと。スロート・ラッチとも呼ぶ。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P206)
セッテ・ピエゲ
セッテは7、ピエゲは折ること。スカーフを折り畳んで結んだ。いわばネクタイの起源ともいえる形の縫製テクニックのこと。本来は、芯地を使わず、通常の2倍という1枚の生地を7つに折り畳んで作る。今ではこれができる職人も少なくなっている。日本では芯地を使用したものが主流。「セブンフォールド」ともいう。
セット・イン・スリーブ
普通袖のこと。一般の背広に見られるような身頃と袖を付け合わせたタイプの袖。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P207)
切羽(せっぱ)
上衣やジャケットの袖口のボタンホールを開けたスタイル。「本開き」とも「リアルボタンホール」とも呼ばれる。高級紳士服はすべて切羽が施される
しかし、切羽にすると仕上がり後の袖丈の調整はできなくなります。仮縫い、中仮縫いをしてしっかり仕立てる必要があります。また切羽にするとボタンホールのための縫い込みが必要になり、多少重くなります。
切羽とお台場について
切羽:切羽が施されているからクラシックではなく、クラシックなスーツにはかつて切羽が施され、切羽はテーラー達が顧客のために、手を洗うとき、シャツ同様スーツの袖もまくりあげられればと考案した一つの知恵である。クラシックを踏襲するものには違いないが、本開きイコールクラシックなスタイルにはつながらない。
お台場仕上げ:お台場仕上げのもともとの発想は、裏地が古くなり取り替える必要ができたとき、裏地をはずしやすいようにテーラーが細工したもので、クラシックとは何ら関係が無い。そのスーツが上質であるという証でもない。ポケットが、表地の見返しと裏地をまたがなければならない理由はどこにもない。
(ディテールでオーダースーツを主張するのも一つの方法であるが、ちゃんとしたオーダースーツならそのシルエット、プロポーション、質感でオーダーであることは一目瞭然である。)
背広の様式(スタイル)
背広の様式は大別して3つあります。まずひとつめはブリティッシュスタイル。そして欧州(コンチネンタル)スタイル。最後にアメリカンスタイルの3つです。コンチネンタル(欧州大陸)すたいるとブリティッシュスタイルを分けているのは、同じヨーロッパでありながら、英国と欧州大陸のスーツがそれぞれ別の伝統によって、育まれてきたからです。
ゼニア
エルメネジルド・セニア。1912年、北イタリアでも毛織物工場として創業。68年よりスーツを手がける。
背広の考案者
背広の考案者は英国人ではなく、ドイツ人であった。マインツに住む洋服仕立て職人ヴィルトガンスが1830年に一枚の生地から裁断し、これを縫い合わせてつくったのがはじまりと言われている。その後、サヴィル・ロウの仕立て職人達がつくるようになって発展した。
セミ・クローバー・ラペル(Semi clover lapel)
上衿は角で、下衿のきざみのところを丸くカットした衿の型。
セミ・ノッチド・ラペル(Semi notched lapel)
ピーク・ラペルの下衿の角度をやや下げて、小さめにした衿の型。
セミ・ノッチド・ラペル
背広の衿型の一種。ノッチド・ラペルのした衿の角度を少しだけ上にあげた感じのもの。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P207)
セミ・ラグラン・スリーブ(Semi raglan sleeve)「肩抜き袖」
袖山の中央に肩からカフスまで縫い目が通っているもの。普通袖と同じにみえるが、袖のつくりが異なる。別名スプリットスリーブ。主にコートに用いられる。
セルティック・ツィード(Celtic tweed)
平織りのホームスパン。特にホップサック織にしたもの。
紡毛織物の代表的な仕上げ
ビーバー仕上げ…ビーバーの毛皮に似せて仕上げたもので、縮絨、起毛した毛羽をタテの方向に寝かせて刈り揃えたもの。
ベロア仕上げ…ベロアとは、フランス語でベルベットのことで、縮絨、起毛した毛羽を刈り揃えて、ビロードのような表面感にしたもの。
メルトン仕上げ…強く縮絨して反物をフェルト状にし、織り目が全く見えないようにしたもので、昔「ラシャ」と呼ばれていた表面感のもの。
セレクトショップ → スペシャリティー・ストア
ファッション商品を扱う専門店のひとつだが、メーカーから仕入れる普通の品揃え方の店とはちがって、経営者独自の選択眼で内外のブランドを集め、独自のマーチャンダイジングを貫いてオリジナリティーを発揮する「新・品揃え店」を総称する。外国でこの種の店をいう的確な言葉は見当たらないが、あえてこじつければセレクテッド・ブランド・ショップ、一般的にはスペシャリティー・ストアが近い。
セルッティ
もともとは、イタリア系フランス人、ニノ・セルッティのブランド。1967年からスーツを手がける。現在はトータルに商品を展開。クラシックを踏襲しながら、そこにモダンを付加するのが巧みである。
繊維の細さ:ミクロン
繊維の細さを示すミクロンを厳密に表現すると1ミクロンは千分の1ミリ。ちなみにビキューナは平均12ミクロン、カシミヤは15ミクロンとされ、極細の13ミクロン台になるとビキューナに接近、15ミクロンではカシミヤに近い風合いになる。スーパー120’Sで17,5ミクロン。2000年は細番手がエスカレートしてスーパー200’S(13,0ミクロン)が登場している。
センタープリーツ
ジャケットなどの背中、中央縫い目にとられるヒダのこと。スポーティーなアクセントの一つであり、バックベルトとともに用いられることが多い。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P208)
センター・クリース
ソフト・ハットの一種で、クラウンの中央に折り目(くリース)が入ったもの。「中折れ帽」という。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P207)
側章
フォーマル・ウェアのトラウザーズの脇線縫い目にそって飾られる、比較的広幅の飾りテープのこと。燕尾服は2本、タキシードは1本と決められ、朱子織のシルクやタフタなどから作られる。(「ファッション薀蓄事典」 邑 游作 アポロ出版株式会社 P208)
底艶
的確な仕上げによって、原毛が本来もっている美しい光沢が、にじみ出ている上品な艶のことを「底艶」といいます。これに対して、仕上げ工程のプレス加工が強すぎて、人工的についた艶は「付け艶」といって嫌われます。このような「押さえすぎ」によって出た艶は、むしろ「テカリ」というべきでしょう。
選毛(ソーティング)
一頭の羊の毛は、体の部分によってセンイの太さ、長さ、クリンプの状態、光沢などが違うので、不純物を取り除きながら、同じ状態の原毛ごとに選り分けます。この作業を選毛(ソーティング)と呼びます。
この選毛という作業は、機械に頼れないので、すべて人の手で一頭分ずつやります。
この選別が的確かどうかで、これ以降の工程や、糸の均一性に大きな影響を与えますので大変な作業です。鋭い鑑識眼と手触りによる的確な判断力が求められます。
ソシアル・ウェア → インフォーマル・ウェア
ソシアル(正しくはソーシャルと発音)は「社交的な」また「社交の、懇親の、社交界の」という意味で、これは広義の社交服一般をさす和製英語。つまり、ちゃんとしたフォーマル・ウェアほど格式ばらないパーティー・ウェア全般をいう。ソシアルというのは、元々ソーシャルから作られた日本の紳士服メーカーのブランド名で、日本ではこれが一般化してしまった。国際的には略礼装という意味から、インフォーマル・ウェアというほうがよい。
ソフトスーツ(Soft suit)
ソフト素材,ソフト仕立てを特長にした背広。イタリア系のデザイナーが得意とする。80年代後半から注目されるようになった。
ソフト・スーツ → ソフト・メイク・スーツ / ソフト・テーラード・スーツ
ソフトな外観とソフトな仕立て、さらにソフトな着心地を特徴とするメンズ・スーツ。従来は柔らかな生地で作られた婦人用のスーツを言ったものだが、1980年代のメンズDC(デザイナー&キャラクター)ブランドの登場以降、彼らの作り出すビッグ&ルーズ・シルエットの新しい感覚のスーツを総称するようになった。本来はイタリアのデザイナー達によって作られたニュー・スーツをいったもので、手縫いの部分が多くて、上質の薄く軽い芯地を使った、風が吹けばパタパタなびくような身体になじむスーツが、ソフト仕立てのスーツ。日本での用法は間違っている。
ソフトラインはビジネスに不向き
相変わらず若いビジネスマンたちのデザイナーズスーツが目立つ。ショルダーが大きく丸く、全体的にはルーズなのだが、脇からウェストにかけてのラインだけが、体にぴったりと沿っている。
ジョルジオ・アルマーニに代表される、このプロポーションを、日本ではソフトスーツとくくっているが、正しくはソフトラインである。クラシックなスーツに比べ、全体的に曲線を生かし、服に与える「ゆとり」の量を必要以上にふくらませたスーツだ。
ソフトラインは、ビジネスには不向きである。デザイン性が強すぎる。
ビジネススーツは、線が面を、きっちり支配し、機能性に長け、安定感に飛んでいることが条件だ。ほどほどの立体感も必要である。線とは、ラペル(襟)や裾の直線的ラインのことである。
スーツの縫製の役割は、この直線的な線の固定なのだ。正確な固定が試みられているからこそ、立体感と、めりはり感が表現できるのだ。
これに対して、ソフトラインは、ブランドによって異なるが、この線を工夫し、面全体の表情を、クラシックなスーツに比べ、より優しく表現しようと試みる。そのために、立体感を必要以上に強調するきらいがある。たとえばゆとりの表現のための、広い肩やドレープである。ドレープは、自然にできる生地の余りシワなのだが、ソフトラインは、美しいドレープを作るために、さまざまな工夫を試みる。人工素材も使用する。
ラペルのシルエットも、オーソドックスなスーツに比べ曲線的で、ゴージライン(上襟と下襟の縫い目線)も緩やかなカーブを描いている。
縫製が線を固定することは意味があるのだ。「折り目正しい」という言葉通り、公式のビジネスシーンで、自分の内面をストレートに相手に伝達するには、正しいスーツ姿こそいちばん効果的なのだ。ヨーロッパでは、こうしたスーツをパワースーツと称する。日本語に置き換えれば自分の能力や知力を表現するための、もっとも有効なスーツである。
ソフトラインは、リラックスした時身につけてこそ、粋に見えるスーツなのだ。
梳毛「そもう」(combing)
「梳毛糸」という言葉でよく目にする言葉。カード機から出てきたスライバーの繊維は、まだほとんど平行に並んでいない。梳毛の梳は、毛をすくと言う意味で、ここでスライバーを6~10本合わせて(ダブリング)、細いスライバーにする。この工程をインター工程といい、ダブリングとドラフトを何度も繰り返して、次第に繊維の平行度を上げ均一にしていく。その後、コーマ機という細かい櫛状の機械にかけられて、スライバーは不純物のないものになる。
梳毛糸(そもうし)
羊毛織物が櫛で梳いたように平行に並んだ状態になっている糸。
ソルテックス
極細ながらも耐久性に優れたオーストラリア産メリノウールと柔軟性に秀でたニュージーランド産メリノウールを強く撚り、その反発力により線遺憾に隙間を多く作ることで、通気性とシワ回復力を向上させたもの。また、特殊なトリートメント加工フィニッシュによて、モヘアに似たドライな風合いをも備えた素材へと仕上げられている。ドレープ感に富んだ、サラリとした風合いは、真夏にこそ実力を発揮する。